著者
川村 悟
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47-53, 2015 (Released:2016-05-13)
参考文献数
9

中小企業の発展には,中小企業診断士,特に独立開業した資格者による活躍が重要である。中小企業診断士の円滑な独立開業に貢献するため,撤退事例の調査を実施する。独立開業経験者に対して定性的な聞き取り調査を行い,撤退事例とリアリティショックがどのように関連しているかを分析する。中小企業診断士の「資格に対する過信」や「コンサルティング業務へのあこがれ」がリアリティショックを生み出し,独立開業の撤退を引き起こしうる。また,既存のキャリア研究では「リアリティショックの対応策としてRealistic Job Previewが有効である」と主張するが,本研究は「独立開業の場合では起業者の自助努力が重要である」と指摘する。
著者
小島 貢利
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.78-83, 2021-06-25 (Released:2021-06-25)
参考文献数
31

近年,リニア中央新幹線の名古屋以西の建設ルートに関して活発な議論が行われている。伊勢湾地域(愛知県,三重県)では,三重県の亀山市周辺に新駅設置が噂されているが,最も適切であるのか疑問が残る。本研究では,リニア中央新幹線の新駅を,中部国際空港(セントレア)と鈴鹿市周辺に建設することを提案する。セントレアと鈴鹿市を経由することで,伊勢湾地域に限らず,リニア中央新幹線沿線住民の利便性の向上や,経済効果が期待されることを説明する。また,本研究の提案が実現すれば,成田および羽田空港の過密解消や,首都圏や関西圏の災害時の旅客輸送のバックアップにも貢献するため,国策として検討する価値があることを主張する。
著者
劉 建 福澤 和久
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.7-13, 2023 (Released:2023-11-10)
参考文献数
20

ICTの進展は人々の働き方にも大きな変革をもたらしつつある。SNSなど情報技術の発展は人々の働き方を変えており,次世代を担う若い世代のなかでは「YouTuber」という新しい職業が人気を得ている。個人,個人事業主,小企業などがYou-Tuberとしてビジネスを行うことも,企業経営の一つとして捉える時代になったと言える。しかしながら,YouTuberという職業は新しい個人・組織・小企業の形態であるため,どのようなコンテンツが受け入れられるのか,学術的な研究は数少ない。本研究では,職業およびビジネス形態の多様化により現れた動画配信者,そのなかでも代表的な「YouTube」に着目する。視聴者がどのようなコンテンツに反応するか,先行研究から抽出した仮説をもとにYouTubeの視聴データの収集および分析を通じて仮説の検証を試みた。
著者
西崎 信男
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.145-151, 2008 (Released:2009-06-08)
参考文献数
20

経済発展に伴い、第3次産業がGDPで6割超を占める先進国の経済構造では、サービス業活性化が不可欠である。一大サービス産業である英国プロサッカーを見る。無形性等サービスの特質から、スタジアムはサービス提供システムで重要な役割を担う。有料TV発達等も加わり、サッカーは「スポーツからビジネスへ脱皮」した。そこでは自前のスタジアムが、差別的優位性を発揮している。クラブの売上高の中で、景気に左右されない入場料は経営の基盤である。入場者数を増大させるためには、ファンのクラブへの思い入れを毀損しないことである。そのためには、スタジアムを単なる「経営資源」ではなく、「地域共有資産」と位置づけることが重要である。
著者
木村 勝則
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.85-91, 2019 (Released:2020-09-05)
参考文献数
15

2017年4月1日施行の資金決済に関する法律,資金決済法第2条5項で主にビットコインを法律によって「仮想通貨」と定めた。この仮想通貨はブロックチェーンという技術が使われている。この仮想通貨という資産の会計的な属性を考察した。
著者
魏 興福 田村 隆善
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.124-129, 2014 (Released:2015-06-27)
参考文献数
22

中国不動産業は,中国における新たな産業として過去35年間に順調に発展してきたと言える。中国における不動産供給側のおもな担い手は,不動産開発企業であり,都市部での旺盛な住宅需要と豊富な投資資金の流入を背景に,それら企業は住宅開発を中心に急拡大してきた。本研究では,中国不動産業研究の第一歩として中国不動産業発展の歴史を政府の土地政策や金融政策などの視点から整理し,中国不動産業の特徴と課題を示す。また,中国不動産業の現状を開発規模,民間企業と国有企業の混在,住宅購入プロセスなどによって特徴づける。
著者
佐藤 茂幸
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.110-116, 2011 (Released:2012-06-22)
参考文献数
5

本論の目的は,大月市の郷土料理である「おつけだんご」を事例にして,持続可能な地域活性化のモデルを提示することにある。そのために,B級グルメ大会で優勝実績のある「富士宮やきそば」と「厚木シロコロ・ホルモン」の活動を参考に,食による地域活性化の成功要因を整理することから始めた。そしてその成功要因を前提に,B級グルメ大会の出場結果から,大月市の郷土料理の検証を行った。こうした検証結果を踏まえ,大月市を活性化させるためのスローフードをベースにした地域ブランドの構築に関わるモデルを新たに提示する。
著者
大室 健治 佐藤 正衛 松本 浩一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.112-118, 2015 (Released:2016-09-15)
参考文献数
15

本稿では,農研機構が開発した「Web版農業経営診断サービス」(以下,Webサービス)の特徴を詳述したうえで,Webサービスの試行版に対する利用者のユーザ評価結果を整理し,ユーザ要求に沿ったWebサービスの今後の改良方向を提示する。これまで,各種団体が農業経営診断ツールを開発してきているが,それらに共通する課題は,営農類型・規模などを考慮した標準値データベースを持たないため,診断対象の値と標準値との比較考量ができない点にあった。Webサービスは,農林水産省が保有する個票データの解析結果に基づく標準値データベースを内蔵しており,各診断指標についての標準値との比較,ならびに良好・不良などのランク判定が可能である。Webサービスの今後の改良方向は,外部診断者の業務内容に沿った対応,営農類型の特殊性を踏まえた診断手法の組込み,6次産業化などの多角的な農業経営への対応である。
著者
庄司 真人
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.111-116, 2012 (Released:2013-07-26)
参考文献数
11

本稿は地方キャラクターが地域活性化に貢献すると認識する組織においては,情報の伝播,対応の程度が高いということを実証的に分析したものである。地域キャラクターは地方公共団体によって設定・認定されているもので,近年,急増しているものである。しかし,この地域キャラクターの前提条件や効果について十分には考察されていない。そこで,本稿では,地域キャラクターに関して概念的に考察したうえで,地域活性化担当者に対するアンケート調査の結果をもとに,地域活性化に有効と考えられている組織の特性に関して,情報の発生,伝播,普及という市場志向の視点から検討したものである。住民の声を拾い上げる組織が地域キャラクターによる地域活性化に効果的であり,地方公共団体におけるマーケティング活動の重要性が明らかとなった。
著者
西﨑 光希 横山 淳一
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.49-55, 2023-11-28 (Released:2023-11-28)
参考文献数
11

近年,従業員らの健康管理を経営的な視点で考え,戦略的に実践する健康経営が注目されている。健康経営は企業の従業員の健康状態を良くするだけでなく,経営課題の解決にも効果的であるとされている。しかし現状,中小企業における健康経営の認知度は低く,中小企業の健康経営の効果に着目した研究も少ない。そこで本研究では,中小企業を対象にアンケート調査を実施し,数量化III類を用いて分析を行った。そして,課題解決および健康経営の取り組みに関するモデルを作成し,中小企業における効果的な健康経営の在り方について考察した。その結果,経営者と健康づくり担当者,従業員の間で健康経営のねらいを共有することの重要性が示唆された。
著者
神田 將志
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.42-48, 2023-11-28 (Released:2023-11-28)
参考文献数
12

サブスクリプション型コンテンツ配信サービス,特に急拡大する定額制動画配信(Subscription Video on Demand)サービスにおける消費者行動の分析については,計画的行動理論をはじめとする消費者行動モデルに基づく研究が行われている。しかしながら,調査時点における消費者の将来的な行動意図の推計にとどまっている。そこで,本研究では,行動意図に加え,実際の行動までを実測データとするシングルソースデータを用い,共分散構造分析による消費者の意思決定プロセスの分析を試みる。実際の行動変化の観測データから,行動意図,および行動を因子変数化し,計画的行動理論による消費者行動モデルのマーケティングへの応用の有効性について検討する。
著者
土井 貴之
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-6, 2023 (Released:2023-11-10)
参考文献数
16

本稿の目的は,明治期の醸造(酒造)簿記書の考察から,三位一体酒造業体制のもとでは酒造技術や雇用情報だけでなく複式簿記の知識も共有されていたことを指摘し,当時の複式簿記による酒造経営と酒税の管理方法を明らかにすることにある。近代期の酒造業は主要産業のひとつで,酒造業固有の帳簿記録により酒税を納め,日本の財政を支えていた。文献史研究として当時の酒造業向けの簿記書を分析し,酒造経営の内容,その記録と管理方法,酒造業界と取り巻く社会的・経済的な背景について考察する。また,複式簿記による記録が経営者や杜氏だけでなく税務署員にも活用され,酒造経営と酒税の管理に貢献していた可能性についても言及する。
著者
舘岡 康雄 森下 あや子
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.88-93, 2013 (Released:2014-11-20)
参考文献数
8

経営活動においては,一般に単体(個人,企業,国家)が基本となり,競争を前提に収益をあげながら社会に貢献することが求められている。しかし,筆者が提唱しているように,世の中は今大きく変化しつつあり,リザルトパラダイム(結果を重視するあり方)からプロセスパラダイム(過程を共有しながらイノベーションが起こるプロセスを重視するあり方)に移行している。戦略や実践から会議の進め方に至るまで,あらゆる領域においてプロセスパラダイム的取り組みを行っている企業が社員のモチベーションを高め,組織変革に成功し,継続的に高いパフォーマンスを生み出している。この場合,そのような組織は,単体に注目するのではなく,単体と単体の関係性を高めることに注力している。本研究では,関係性を重視したマネジメントの概念規定を提案したい。また,その概念が持続可能性に関しても関係が深いことを示す。
著者
川村 悟
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.34-40, 2022 (Released:2023-01-27)
参考文献数
11

中小企業診断士における資格休止者を取り上げる。休止者は増加傾向にあり,さらに進行すれば中小企業支援の停滞につながりかねない。研究目的は資格者が活躍しやすい環境づくりに貢献することである。実態を洗い出すため,リサーチ・クエスチョンを「資格休止者の典型例とはどのようなものか」と設定する。文献・資料を用いて,年代は40~50代,職業は民間企業の属性が多数を占める,自己啓発志向が強い者が休止に陥る可能性があるとの特徴を指摘する。これらを踏まえ,「自己啓発志向の強い40~50代の民間企業勤務者」という典型例を示す。休止者の実態を明らかにし,志願者や資格者に対するキャリア選択の情報となる点が本研究の意義である。
著者
後藤 時政 永井 昌寛
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.122-140, 2007 (Released:2008-11-07)
参考文献数
8

2005年に開催された愛・地球博に対する会場近隣大学学生の評価を明らかにするため,愛知工業大学学生の意識調査を実施した。学生の愛・地球博への関わり方に対して6つの仮説を立て,それらに沿って意識調査の質問項目を作成した。得られた回答を分析し,前回報告された愛知県立大学学生の評価と比較したところ,近隣大学と言えども,2大学間の学生の評価にはいつかの差異が見られた。ただ両大学学生とも,愛・地球博開催期間中,それが近隣で行われた故の悪影響を大きく受けており,総合的評価が低いことでは一致を見た。これらの評価を参考にし,今後,万博や大規模なイベントが開催される際,主催者が近隣大学に対して配慮すべき点について言及した。
著者
藤川 なつこ
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.34-40, 2011 (Released:2012-02-15)
参考文献数
12

組織学習が行われるためには,個人レベルから集団レベル,さらに組織レベルへと学習が進展しなければならないが,その過程に断絶が生じ,組織学習は往々にして阻害されている。したがって,本論文では,組織学習が組織全体に波及しない原因を,組織内の部門間および階層間に生じる時間志向の差異の観点から解明し,さらに,このような組織の学習障害を克服するための方途を,組織デザインの視点から考察する。
著者
小森谷 浩志
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.69-75, 2011 (Released:2012-02-15)
参考文献数
13
被引用文献数
1

質の異なる変化が加速化し,社会・経済的状況の不確実性がますます増加している現在,企業にとってのよりどころとしての経営理念の重要性が,一層増しているように見受けられる。筆者は2005年から2009年にかけ,4社の経営理念に関する助言業務を行った。そのなかで特に主題となったのが,浸透に関することである。本稿では,経営理念の策定から浸透の取り組みにおいて何が要点になるのか検討した。結果,経営理念の策定,現場での実践,節目といったおのおの3段階での問いかけと振り返りによる,“再意味化”を組み込むことの重要性が確認できた。“再意味化”は問いかけと振り返りにより促進された。そして,“再意味化”することで,経営理念が磨かれ,エネルギーが吹き込まれた。経営理念自体が目的であるとともに,経営をより良くしていく有効な手段として生かされている状態になり,共有化に進み結果として浸透の道筋が見えた。
著者
小島 貢利 田村 隆善
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.106-111, 2015 (Released:2016-09-15)
参考文献数
16

長期的な円高が進行し,日本の製造業は生産拠点の海外移転を加速させた。海外進出した企業は,為替変動のリスクが少なくなることを,利益面のメリットとして押し並べて主張している。一方,東日本大震災以降原子力発電が停止し,石油の輸入が増加したがために貿易収支が赤字に転換し,政権交代後に急激な円安が進行した。本研究では,一例として自動車メーカーを取り上げ,為替変動が輸出企業の利益率に与える影響を統計分析する。次に,経済性分析モデルを考え,為替レートや変動費の連動性が輸出企業の損益に与える影響を評価する。また,生産拠点のグローバル展開が必ずしも企業収益にとってメリットばかりではなく,むしろ円安のリスクを負い,増収のチャンスを失うことを数値例などで紹介する。
著者
福田 康典
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.21-26, 2014 (Released:2015-06-10)
参考文献数
14

本研究の目的は,価値共創のモデル化におけるプラクティス概念の適用がどのような貢献を果たすのかという点を明らかにすることである。ここでは,価値共創のモデリングにおける研究課題として,価値共創行為の説明と価値共創の連結構造の説明という二つの課題を取り上げ,プラクティス概念の適用がこうした研究課題の解決にどのように寄与するかを考察している。考察の結果,プラクティス概念を用いることで,顧客の価値共創行為の発生や変容を,従来とは全く違った社会文化的な視点から説明できるようになることが明らかになった。また,プラクティスの束と複合体という概念を利用することで,価値共創の連結構造をつながりの密度ごとに識別できるようになる点が確認された。最後に,こうした考察結果のマーケティング診断に対するインプリケーションについて検討を行った。
著者
加藤 里美 伊藤 直美 森 智哉
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.74-80, 2016 (Released:2017-09-16)
参考文献数
8

経団連によれば,企業が新卒採用時に重視する要素はコミュニケーション能力である。このことは,企業は新卒者にコミュニケーション能力に長けた人材を求めているということを示している。企業はどの程度のコミュニケーション能力を新卒者に求めているのであろうか。また大学生はどのように自己評価しているのであろうか。本論文の目的は,企業が新卒者に求めるコミュニケーション能力と大学生が自己評価するコミュニケーション能力に関する認識にギャップがあるのかどうかを明らかにすることである。仮説検証の結果,大学生と企業には明らかなギャップがあることが示された。