著者
土屋 玲子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.162-172, 2000-03-30

本論は, 学内にあるカウンセリングルームに通う生徒たちが, そこでは普通に学習もし, 友人関係もつくれるのに, なぜ学級には適応しないのかという疑問から出発した。筆者は, 日々学校内での教師の実践を見ていて, 力量のある教師が, 教師に特有の教える・指導するという働きかけと, カウンセラーにみられる気付く・待つという両方の姿勢を適宜, 使いこなしていることに気がついた。こういう教師の学級では, 問題児といわれた生徒が, 落ち着き, 目立たなくなる。そこで, 筆者は, 教育の場にその両方の働きが必要と認識している4名の教師の実践を検討した。結果は以下のようであった。1)学校環境そのものの中に, 教師が, 気付く・待つことを阻害する要因が含まれる。2)教師(教科指導の専門家)とカウンセラー(心の領域の専門家)の役割を明確に分担する方向と, 教師個々に, あるいは, 学校全体の雰囲気に, 両方の働きを混在させようとの方向ができている。これは, 教師の専門性をどのように捉えるのか, スクールカウンセラーの果たすべき役割, そのための適正な配置方式といった問題につながってくる。スクールカウンセラーが配置されて5年が終わろうとしている今, 改めて検討すべき課題といえる。