著者
土屋 理恵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.130-145, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
9

本稿は,法務省告示校である日本語教育機関において聴解授業の改善を目的として実施した研修に関する報告である。研修は事前・事後課題を設定した対面研修の後,各教師に実践での研修内容の活用を奨励し,3か月後に授業見学を行うというものであった。その結果,授業見学時には全対象教師に授業設計で改善が見られ,研修内容が一定以上行動に転移したことが確認された。同時に,授業設計以外の面で機器操作,デリバリースキル,教室経営における課題が判明した。そこで,機器操作を含めた聴解授業実践のノウハウを教師全体で共有し,授業見学で互いに気づきを得る機会を追加した。最初の対面研修から9か月後の追跡調査では,全対象教師が聴解授業に研修内容を1つ以上活用していること,その一方で自身の聴解授業においてプラスの変化を感じているのは半数以下であることがわかった。授業の総合的な改善には継続した取り組みが求められる。