著者
平沢 正 土田 政憲 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.145-152, 1992-03-05
被引用文献数
8

水稲の気孔開度, 光台成速度の日中低下の程度は生育条件によって異なり, これには吸水能力が関係すると考えられている. 本報告では, 受動的吸水能力を表わす蒸散の盛んな時の水の通導抵抗と能動的吸水能力を表わす出液速度を生育条件の異なる水稲の間で比較し, さらに両吸水能力の関係, 受動的吸水能力と気孔開度の日中低下の程度の関係を検討した. 土壌に可溶性でんぷんを加え根ぐされをおこした水稲, 低照度, 高湿度条件に生育し, 根の発達程度の劣る水稲では対照の水稲に比較して出液速度が小さく, 水の通導抵抗が大きい, いいかえると能動的吸水能力と受動的吸水能力が低かった. また, 通常の水耕液に生育した水稲に比べて, 窒素濃度の低い水耕液に生育し根群のよく発達した水稲では出液速度が大きく, 水の通導抵抗が小さい, いいかえると能動的吸水能力と受動的吸水能力が高かった. 水の通導抵抗が大きい水稲ほど日中の気孔の閉鎖程度が大きく, 受動的吸水能力と日中の気孔閉鎖程度とは密接な関係があった. 一方, 測定の約1週間前に硫安を追肥し, 葉身の窒素濃度を高めた水稲では出液速度は大きく, 能動的吸水能力は高かったが, 水の通導抵抗, いいかえると受動的吸水能力は対照区と変わらず, 対照区との気孔開度の差は早朝に比べて日中は小さかった. 気孔開度の日中低下には受動的吸水能力が関係するので, 日中の気孔開度が大きく, 高い光合成速度を維持するためには, 葉身の窒素濃度が高いことに加えて受動的吸水能力の高いことが必要であることがわかった.