著者
坂上 ちえ子
出版者
鹿児島県立短期大学
雑誌
鹿児島県立短期大学紀要. 自然科学篇 (ISSN:02861208)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.23-44, 2006-12-22

今回,前報に引き続き,被服に関する色彩嗜好調査・測定に用いられる刺激試料の有効性を検討することを目的に,黒を中心に色の嗜好や評価に影響を与える刺激素材の形状方向,種類,明度について,一対比較法と順位を用いた予備測定を行った。その結果は次の通りである。1)刺激素材の表面形状の方向については,高明度の白以外で表面形状の方向に差が認められ,黒と赤ともに縦縮み方向に対する嗜好と評価が有意に低かった。2)刺激素材に用いる繊維の種類検査では,赤での評価にだけ有意性が認められ,綿ブロードの光沢の少ない色彩に対する評価が高かった。3)刺激に用いる素材のうち黒の明度差検査では,明度が最も低く光沢の少ない,黒らしい黒に対する嗜好と評価が顕著に高かった。4)前報の追試として行なった順位法による刺激試料間の比較では,前報と同様,黒のみで有意差が認められた。得点上位を実際の服地素材が占め,黒については,紙製より布製の刺激素材のほうが有効であることが示唆された。なお,本報告は,日本色彩学会関西支部九州色彩ネットワーク研究会in福岡2004(2004年12月)において口頭発表した内容に加筆したものである。