著者
石田万里 石田隆史 坂井千恵美 アンディ アリヤンディ 木原康樹 吉栖正生
雑誌
第55回日本脈管学会総会
巻号頁・発行日
2014-10-17

【目的】オメガ‐3系脂肪酸は,全死因死亡と各種心血管疾患のアウトカム(突然死,心臓死,心筋梗塞など)を低減させると報告されている。私たちはこれまで動脈硬化発症のメカニズムにDNA損傷によるゲノムの不安定性が関与していることを報告してきた。そこで本研究では,オメガ‐3系脂肪酸が動脈硬化進展を抑制するメカニズムのひとつとして,ヒト血管内皮細胞のDNA損傷をオメガ‐3系脂肪酸が軽減するか否かを検討した。【方法と結果】酸化ストレス(H2O2)によるヒト大動脈内皮細胞のDNA損傷,特に二本鎖切断を,リン酸化ヒストンH2AX抗体を用いた蛍光免疫染色により定量的に評価した。エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)はH2O2による二本鎖切断を有意に減少させた(p<0.05)。DNA損傷応答の主要タンパクであるATMの活性化はEPAおよびDHAによって増強せず,二本鎖切断の減少はDNA修復の増強によるものではないと考えられた。ウェスタンブロットを用いた検討から,EPAおよびDHAは細胞内のカタラーゼの発現を増強することが明らかとなった。そこでCM-H2DCFDAを用いて細胞内活性酸素種(ROS)量を定量したところ,EPAおよびDHAは内因性およびH2O2投与後の細胞内ROS量を有意に抑制した(p<0.05)。【結論】オメガ‐3脂肪酸であるEPAおよびDHAは血管内皮細胞においてH2O2によるDNA損傷を軽減する。この作用はカタラーゼの発現増強およびそれによる細胞内酸化ストレスの減弱によることが示唆された。