著者
末久 弘 松田 英祐 坂尾 伸彦 宮本 章仁 藤澤 憲司 松野 剛 坂東 健次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.2214-2219, 2017 (Released:2018-04-30)
参考文献数
12

症例は55歳,女性.38度台の発熱,両側手・膝・足関節の疼痛・腫脹を主訴に当院を受診した.胸部CTにて左肺上葉に長径3.5cm大の充実性不整形腫瘤あり,PET検査では強いFDG集積(SUVmax=36.7)を認めた.肺門・縦隔リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は無く,少量の左胸水を伴っていた.四肢X線では,大腿骨や脛骨骨膜部に二重線を認め,大腿骨MRIでも骨幹部の骨膜下に高信号を呈していた.理学所見では,ばち指・趾も認めた.以上より,肺性肥大性骨関節症を合併した肺癌cT2aN0M0 stage IBを疑い,審査胸腔鏡後に開胸で左肺上葉切除+縦隔リンパ節郭清を施行した.術後経過は良好,関節痛は術後1日目から消失した.病理検査の結果,多形癌,pT2aN0M0,stage IBだった.肺性肥大性骨関節症は進行肺癌を合併することが多いが,肺病変の治療により関節炎の症状が劇的に改善することが期待できる.
著者
林 龍也 重松 久之 坂尾 伸彦 杉本 龍士郎 岡崎 幹生 佐野 由文
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.27-31, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
14

転移性肺腫瘍による続発性気胸は時に経験されるが,その原発腫瘍としては肉腫,特に骨肉腫による報告が多い.今回,骨肉腫の治療終了後,気胸の発症を契機に骨肉腫の肺転移を診断し,その後全身化学療法を施行して無再発生存を得ている症例を経験したので報告する.症例は14歳の男性で,左脛骨原発の骨肉腫と診断され,腫瘍広範切除術と人工関節置換術が施行された.術後化学療法が行われ,治療終了約6ヵ月後に右自然気胸となった.画像上,肺転移巣を疑う陰影は認めなかったが,右上葉胸膜直下に5 mm大の囊胞を認めた.術中同部位からの気漏を確認し,肺部分切除術を施行した.組織学的に骨肉腫の肺転移であり,胸膜直下の転移巣による胸膜の破綻が気胸の原因であると考えられた.骨肉腫の既往や治療後経過観察中に気胸を発症した場合は,骨肉腫の肺転移を疑い,診断と治療を兼ねた外科切除が有用であると考えられた.