著者
渡辺 洋子 井手 誠 坂根 靖子 岩橋 叔恵 岩橋 徳英 中嶋 久美子 髙栁 宏樹 園田 紀之 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.528-533, 2020-08-30 (Released:2020-08-30)
参考文献数
10

思春期は精神心理的問題を抱えやすく,慢性疾患である1型糖尿病を発症し受け入れることは容易ではない.今回我々は,心理社会的課題を抱えた1型糖尿病の女児がインスリンポンプ導入を通じ,自身の課題に向き合い解決へと進むことができた1例を経験したので報告する.患児は13歳時に1型糖尿病を発症.いじめが原因で小学校時から不登校であり,親からのマネジメントを十分に受けていないなど心理社会的問題を抱えていた.幼い兄弟が多く,針による怪我を心配してインスリンポンプを自ら希望した.ポンプ導入の際に,エンパワーメントアプローチや認知行動療法などの心理社会的・行動医学的介入を行った.その結果,患児は糖尿病治療中に遭遇した様々な困難を解決する過程で自己効力感を高め,自立性を得ることができた.治療を通じて自身の心理社会的問題にも取り組み,他者との良好な関係を築けるようになり,学校生活復帰を果たすことができた.