著者
坂田 敦志
出版者
くにたち人類学会
雑誌
くにたち人類学研究 (ISSN:18809375)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-23, 2015

2014年2月のロシアによるクリミア半島制圧およびその後のウクライナ東部の一連の情勢に見られるように、1989年の「冷戦」終結以降、旧社会主義圏は一段と混迷を深めている。本稿では、ネーションをめぐる諸力が国家の枠組みを超えて錯綜するこの圏域にいかにアプローチするかという問題意識の下、「ポスト社会主義の優等生」と目され、西側諸国が先導するネオリベラリズム路線を着実に歩んでいるかに見えるチェコ共和国において、「ポスト社会主義」と括られる新しい時間・空間が実際にはどのように生成され、生きられているのか、その一端に迫る。具体的には、1989年の体制転換から二十余年が経過した2010年5月8日にプラハ郊外ヴィートコフの丘で催された第二次世界大戦戦勝65周年を祝う国家式典において、相反する二つの「時代」を背負った無名戦士の遺灰がヤン・ジシュカの騎馬像下部の霊廟内に並置された出来事を題材に、この出来事に、葬り去ったはずの「歴史」の痕跡を見出すことで、チェコ史における様々な「時代」、様々な文脈、様々な対立軸を組み直しながら進展する「歴史」をめぐる闘争が、二つの遺灰を基点に焦点化され、組織化されるさまを素描する。
著者
坂田 敦志
出版者
くにたち人類学会
雑誌
くにたち人類学研究 (ISSN:18809375)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-23, 2015

2014年2月のロシアによるクリミア半島制圧およびその後のウクライナ東部の一連の情勢に見られるように、1989年の「冷戦」終結以降、旧社会主義圏は一段と混迷を深めている。本稿では、ネーションをめぐる諸力が国家の枠組みを超えて錯綜するこの圏域にいかにアプローチするかという問題意識の下、「ポスト社会主義の優等生」と目され、西側諸国が先導するネオリベラリズム路線を着実に歩んでいるかに見えるチェコ共和国において、「ポスト社会主義」と括られる新しい時間・空間が実際にはどのように生成され、生きられているのか、その一端に迫る。具体的には、1989年の体制転換から二十余年が経過した2010年5月8日にプラハ郊外ヴィートコフの丘で催された第二次世界大戦戦勝65周年を祝う国家式典において、相反する二つの「時代」を背負った無名戦士の遺灰がヤン・ジシュカの騎馬像下部の霊廟内に並置された出来事を題材に、この出来事に、葬り去ったはずの「歴史」の痕跡を見出すことで、チェコ史における様々な「時代」、様々な文脈、様々な対立軸を組み直しながら進展する「歴史」をめぐる闘争が、二つの遺灰を基点に焦点化され、組織化されるさまを素描する。