著者
坪郷 賓
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.21-32, 2019-05-20 (Released:2021-10-02)
参考文献数
48

本稿は,日本における市民社会の形成と課題について述べ,市民自治と市民参加の原像と理論を確認し,1990年代以後の市民参加と自治体再構築の課題について述べる。第1に,市民自治の営みに関して,1970年代から2010年代に至るまで,それぞれの時期の特徴的な市民活動を挙げながら,日本における市民社会の形成を概観する。さらに,市民活動を6類型に類型化することにより,市民社会の強化の課題について述べる。特に,市民活動のための資金の循環の仕組みを作ることと,市民活動団体によるアドボカシー活動が重要である。第2に,1970年代の市民自治と市民参加の原像と理論について述べる。この時期の市民参加の理論は,市民参加が自治体改革と政策革新を必要とすること,市民参加が運動の制度化と制度の運動化によりダイナミズムを獲得することを述べている。第3に,1970年代と比較して,1990年代以降は市民参加の環境が変化するとともに,市民参加の手法が多様化している。しかし,2000年の分権改革以後,市民自治体など自治体の再構築が試みられているが,自治体議会改革はまだ始動したところであり,自治体議会における決算・事業評価・予算のサイクルを確立し,市民参加を試みる段階である。