著者
堀 佳菜子 河野 篤子
出版者
京都女子大学・京都女子大学短期大学部
雑誌
京都女子大学食物學會誌 (ISSN:02893827)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.19-33, 2007-12

山形県庄内地方は,最上川河口に酒田の港があり,内陸部との交易や北前船の寄港地として繁栄した。北前船は,北海道と関西を結ぶ航路であり,酒田を中心とした庄内地方は関西の文化の影響をうけた地域である。山形県庄内地方に在住の調理担当者136名を対象としたアンケート調査をおこない,現在の郷土料理の実態を年齢層別に比較し,あわせて料理にみられる関西との共通点を確認した。1.日常作られている料理のなかで,手のかかる料理や季節感を感じる料理が減少する傾向にあった。2.年齢を39歳以下,40〜49歳,50歳以上の3つのグループにわけ,料理の知名程度,作成状況を調査した。知名度は年齢により差がみられる料理はあったが,知らない料理はなかった。料理の作成度では,若い世代では限られた料理しか作られておらず,幅広く料理を作成しているのは50歳以上であった。3.他の行事と比較すると,正月料理が最もよく作られていた。どの行事の料理も40歳以下でも料理は作っているが,50歳以上に比較すると,減少しつつある。4.交易によってもたらされた食材には棒だら,身欠きにしんなどがあり,京都では芋棒,茄子とにしんの煮もの,にしんそば,庄内地方ではいも子汁,うどとにしんの煮物などに使われていた。最後に,本調査にご協力いただいた八幡町立(現酒田市)八幡中学校の関係者の皆様に感謝いたします。