著者
堀 真紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.68-76, 2001

少子化が進むなか,政策レベルにおいて育児支援策拡充の議論が活発になされている。本稿は,このような議論がなされる背後には国家が想定する一定の家族モデルが存在し,その家族モデルは政策に反映するという問題意識に基づいて,既存の児童福祉政策における家族モデルの抽出を試みたものである。ここでは,単親家庭の児童養育に対する経済的援助制度を分析の対象とし,諸外国の制度との比較を通してその特徴をとらえ,その特徴に着目して国家の指向する家族モデルを検討している。この分析によって,児童扶養手当制度が前提とする家族モデルは性別役割分業に基づく近代家族モデルであり,この家族モデルから外れた家族を制度の対象としているということが明らかとなった。また,近代家族モデルがもたらしている問題点や制度の潜在的機能,私的扶養義務を追及する制度をもたない意味などについての考察も行った。