著者
堀井 幸江 松村 篤 クルス アンドレ フレイリ 石井 孝昭
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.25-30, 2007-05-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

バヒアグラスを用いて,アーバスキュラー菌根菌,Gigaspora margarita胞子を短期間で簡便に生産する手法を確立するため,バヒアグラスの水ストレス状態や胞子生産の指標となる菌根菌生長促進物質量との関係,生産された胞子の発芽や発芽菌糸の感染力について調査した.その結果,短期間に多数のG. margarita胞子を生産するためには,ゼオライト土壌に栽植したバヒアグラスの葉の水ポテンシャルを-1.2MPa前後の水ストレス状態に陥らす方法が有効であることが明らかとなった.特に,37μmのナイロンメッシュ・シリンダーを用いた方法は,シリンダー外へ生長した外生菌糸から形成された胞子を採集でき,根や土壌などの夾雑物が極めて少ないきれいな胞子を容易に得ることができた.接種1か月後にはポット(直径24cm)当たり約26,000個,3か月後には約52,000個,5か月後には約50,000個の胞子を生産できた.新しく生産された胞子の発芽率は良好であり,感染力も充分であった.多数の胞子を生産した水ストレス処理区ではバヒアグラス根内のトリプトファンダイマー含量が高かった.このため、根内のトリプトファンダイマー含量は胞子形成の指標になることが示唆された.これらの結果は,今回開発した簡便な胞子生産技術が大型の胞子を形成する菌根菌にとっても極めて有効であり,菌根菌の活用場面を拡げる上で大いに貢献することを示唆している.