著者
後藤田 直人 板野 聡 堀木 貞幸 寺田 紀彦 児玉 雅治
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.2596-2600, 1999-11-01
参考文献数
14
被引用文献数
12 9

患者は72歳の女性.55歳の時に交通事故で骨盤を骨折.3年前よりときどき右下腹部痛,下痢がみられ,当院を受診.触診では右下腹部から側腹部にかけて圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,腫瘤も触知しなかった.その後も症状が続くため平成10年に注腸造影X線検査(以下,注腸Xp), Computed tomography(以下,CT)を施行し,上行結腸の腹腔内からの脱出を認めた.腰ヘルニアを疑い,手術を行うも胸腰筋膜のレベルで,外腹斜筋の中に腸骨稜を下端とした直径4cmの欠損部があり,上腰三角,下腰三角は脆弱でないため,腰ヘルニアではなく,17年前の外傷による腹壁ヘルニアと診断,周辺組織を縫合することで欠損部を閉鎖した.術後は良好に経過中である.外傷性腹壁ヘルニアは鈍的,鋭的損傷,または介達外力による損傷の結果生じるヘルニアである.受傷後まもなく発生する場合と遅発性に発生する場合があるが,後者はその中でもまれといわれている.自験例では注腸Xp, CTがヘルニアの存在診断に有用であると考えられた.
著者
児玉 雅治 板野 聡 寺田 紀彦 堀木 貞幸 後藤田 直人
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.2288-2291, 1998-11-01
被引用文献数
5

患者は62歳の男性.60歳のとき両側鼠径部ヘルニアの手術を受けたが, 術後1か月目より右鼠径部から右陰嚢に腫瘤の脱出を認め, 排尿異常も出現した.CTでは右陰嚢内に腫瘤陰影が認められ, 脱出したものは膀胱と腸管が考えられた.術中, 右鼠径部内側に小さなヘルニア嚢を認め, 術前に触れた手挙大の腫瘤はヘルニア内容とは別のものと判断し, 膀胱内留置カテーテルに生食を注入したところ, 腫瘤は膨張したため腫瘤が膀胱であると判断し, 切除することなく還納した.鼠径ヘルニア, もしくは大腿ヘルニアの手術に際して本症の存在を念頭におくことも必要と考えられる.また, 術中にヘルニア嚢以外の腫瘤を認めた場合, 安易に切除せず, 膀胱などの可能性を考慮すべきで, 確認は膀胱内カテーテルへの注入法が容易で有用であると考えられた.