著者
中川 将司 堀江 健生
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.101-109, 2009 (Released:2009-11-06)
参考文献数
50

動物の眼は多種多様である。しかし,脊椎動物内ではその器官の構造,視細胞の形態,そして視細胞内信号伝達系等の性質は,最も下等な円口類からヒトまで殆ど同じである。脊椎動物の眼の体制が進化の過程でどのように確立されてきたのか,まだ殆ど分かっていない。ホヤは脊椎動物の最も近縁な現生動物で,その幼生は脊索をもち,神経管から神経系が発生する等,脊椎動物の基本的特徴を備えている。ホヤは脊椎動物型眼の進化を解く鍵になると期待される。筆者らは,ホヤ幼生から視細胞特異的遺伝子を単離し,それらの遺伝子産物に対する抗体によってホヤ幼生の視細胞の形態を明らかにしてきた。本稿では,ホヤ幼生の光に対する行動とその視細胞の形態を基に,脊椎動物の原始的な眼と,脊椎動物の眼や松果体との関連性について考察する。