著者
矢野 知美 橋本 好司 田代 尚崇 棚町 千代子 堀田 吏乃 糸山 貴子 石井 一成 佐川 公矯
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.303-311, 2009-09-25
参考文献数
29
被引用文献数
2

我々は,2008年10月に多剤耐性緑膿菌(MDRP)によるアウトブレイクを経験した.感染の拡大防止・確認のため,環境付着菌検査および患者の鼻腔・尿・便検体の細菌培養検査を行ったが,<i>Pseudomonas aeruginosa, Acinetobacter</i>属,<i>Bacillus</i>属等の菌は検出されたが,MDRPは検出されなかった.<br>   そこで,MDRPを含め環境由来菌による医療関連感染の予防対策として,医療環境水の微生物生息状況を把握するため,無菌室および浴室・シャワー室・洗面台・作業スペースにある給水・給湯水について水道法,日本薬局方および新版レジオネラ症防止指針に記載されている濾過濃縮法に準じ,微生物汚染度調査を行った.その結果,MDRPの検出はなかったが,日和見感染や医療関連感染を惹起する従属栄養細菌と臨床上問題となる<i>Bacillus cereus, Legionella pneumophila</i>等の細菌が検出された.<br>   今回の調査によって,医療環境水には様々な細菌の汚染が考えられるため,給水設備の定期的な維持管理が重要であるということが確認された.<br>