- 著者
-
棚町 千代子
橋本 好司
矢野 知美
佐川 公矯
- 出版者
- 一般社団法人 日本環境感染学会
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.4, pp.271-278, 2009 (Released:2009-10-10)
- 参考文献数
- 27
角膜感染症は,角膜における代表的な日和見感染症で,全世界的にみれば白内障に次いで失明に至る重篤な眼疾患である.細菌性,真菌性,ウイルス性,およびアメーバ性によるものがあり,そのうち角膜真菌症(keratomycosis)は,カビ(真菌)によって惹起される角膜炎であり,起炎菌として酵母様真菌であるCandida属と,Fusarium属,Aspergillus属を代表とする糸状菌に大別され,糸状菌による角膜真菌症は,土壌や草木に関連した外傷が原因で多く報告されている.当院では2005年から2008年の間に糸状菌により惹起された角膜真菌症は,Paecilomyces lilacinus 3例,Fusarium oxisporum 2例,Aspergillus fumigatus 1例,Plectsporum tabacinum 1例の計7例であった.当院では,P. lilacinusによる角膜真菌症が最多であった.P. lilacinusによる症例は重篤な転帰をとるため,感染源が土壌や草木にある場合,本菌を疑い抗真菌薬を考慮し早期治療が行われることが重要である.