著者
堀田 晴子 澤村 貫太 井上 健
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-8, 2007-03

本研究では,心拍テンポ音楽が心身に与える影響について,心拍変動を中心に検討した。モーツアルトの『ディベルティメントK. 136第2楽章』について,3種類のテンポすなわち(1)被験者自身の心拍数で常時変化するテンポ(心拍テンポ),(2)聴取前1分間の平均心拍数による固定テンポ,(3)聴取時の心拍数に無関係のランダムテンポを用いた。音楽聴取時の心拍変動のパワースペクトルから,LF/HFとHF/Totalを算出した。心拍テンポ音楽でHFが大きく,副交感神経優位となり,最もリラクゼーション効果があったと考えられた。各テンポ音楽提示後の心理評定については,「好き-嫌い」の項目のみ有意差があり,心拍テンポ音楽がランダム音楽よりも好まれることが示された。それ以外の項目では有意差はなかったが,全体の傾向としては,心拍テンポ音楽が最も肯定的な印象を与えたようであった。今後,テンポの区別をもう少し明確化すること,被験者が実験室でより自然に音楽を聴けるよう配慮すること,また,音楽刺激として被験者が好む音楽を用いることにより,心拍テンポ音楽の効果についてより深く検討することができると思われる。