著者
堀越 翔
出版者
洛北史学会
雑誌
洛北史学 (ISSN:13455281)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-65, 2019-06-01 (Released:2023-07-21)

本稿は、芦田均のリベラリズム・ナショナリズムの内実と両者の関係、および外交観・安全保障観を確認しつつ、それらに規定される日本国憲法観に迫る。これら諸課題を通じ、芦田の積極的対米協調論を分析することで、戦後日米関係形成期における日本の積極性の一端を明らかにする。個人の自立を重んじる芦田は、占領下で国民の自立を達成する方法を模索し、自由主義陣営の一員としての積極的貢献にその道を見いだした。その実現のために再軍備運動を推進し、民族精神に訴える改憲提唱も行った。だが、芦田の目指す国民の自立とは、あくまで自由主義陣営の一員としての自立であり、共産主義勢力へは警戒心を持ち続けた。芦田の積極的対米協調論について考察する中で、本稿は対米従属―独立という視点からでは捉ええない、日米関係の「共犯性」を生み出すナショナリズム、すなわち積極的対米協調による自立を目指すナショナリズムの存在を明らかにした。