- 著者
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新谷 洋二
堤 佳代
- 出版者
- Japan Society of Civil Engineers
- 雑誌
- 日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.113-119, 1987-06-20 (Released:2010-06-15)
- 参考文献数
- 8
- 被引用文献数
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封建都市城下町が近代都市へと再編し発展する際、近代の代表的交通機関である鉄道が及ぼした影響は大きい。交通は都市そのものの構造を大きく規定するものであり、この構造如何によって、都市の発展は大きく左右されるものである。本研究では、鉄道がどのようにして城下町の近代都市化を促進していったかを、地図上に見られる形態的変化を追うことにより明らかにしようとした。その結果、次の事が明らかになった。鉄道は確かに都市の発達を助長した。それは、どの都市でも鉄道駅に向かって市街地が伸びていることからも明らかである。しかし、その市街地の伸展の度合や時期は、各都市で大きく異なる。それには、鉄道建設当時に都市のもつポテンシャルが各都市ごとに異なり、鉄道を利用して発達できる力をもっていたか否かによって、差が生じたものと考えられる。さらに、市街化の進む過程において、鉄道路線が壁となり、そこで市街化の進度が鈍くなる都市と、それを一早く乗り越えていく都市とがみられる。これにも同様の理由が挙げられる。付け加えて、そのポテンシャルが近世以来のものだけでなく、近代以降形成されたものをも含む。つまり路線を越える力は、近世の石高とか産業に左右されるものではなく、駅方面へ市街化が進む過程で形成された工場及びその関連施設の立地に大きく影響されている。そして、駅の表と裏を結ぶ地下道等の建設がこれを促進している。また、その際、市民性、風土といった目に見えないものも無視できない。