著者
堤 英教
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.5-20, 2012 (Released:2017-09-01)
参考文献数
31

近年,日本の主要政党において,公募等を用いた開放的な候補者選定が普及している。候補者となることができる者,候補者を選ぶ者の範囲の拡大は,政党組織の集権性や凝集性に大きな影響を与えることが予想される。本稿では,特に自民党において候補者選定過程の開放が進んだ2010年参院選を対象として,政党の関与の強さという観点からその実際を整理するとともに,公募等で選定された候補者のプロフィールや政策選好,政党-候補者関係観について分析を行った。その結果,民主党の公募は党本部の関与が強いものであったが,自民党は地方組織が一定程度,関与できる選定方式を採用していたこと,公募等で選ばれた候補者は政党からの自律性を志向する傾向があることなどが分かった。こうした結果からは,候補者選定過程の「開放」が必ずしも政党組織の集権性や凝集性を高める方向には作用しない可能性が示唆される。