著者
李 光鐘 猪股 裕紀洋 阿曽沼 克弘 岡島 英明 山本 栄和 白水 泰昌 塚本 千佳 吉井 大貴
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.946-950, 2010-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13

症例は精神発達遅滞のない4歳男児.腹痛,上腹部膨満を主訴として来院した.腹部単純X線写真で胃内に高度のガス貯留と小腸のびまん性のガス貯留が認められた.精査では閉塞性病変は認められなかった.起床後腹部ガス貯留が著明に増加する一方で,夜間就寝すると軽快することから呑気症(空気嚥下症)と診断された.ファモチジン,大建中湯内服では症状不変で,持続的に胃内容を排出する目的で経鼻胃管を留置した.胃内容の排出促進を目的として塩酸イトプリド,クエン酸モサプリドの内服を開始したが1か月経過しても症状は軽快しなかった.また小児科的に精神的ストレスの関与が完全には否定されなかったため,抗不安薬のロフラゼプ酸エチル投与を行ったが症状の改善は認められなかった.治療開始2か月後に胃運動機能改善を目指し六君子湯投与を開始したところ2週間で上腹部膨満は著明に改善され,X線写真上でも上腹部消化管ガスは著減し2か月後に経鼻胃管を抜去しえた.本症例において六君子湯の有する胃排出促進作用のみならず胃適応性弛緩作用,胃電気活動における抗不整脈作が有効であったと考えられた.