著者
塩沢 孝之
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物鉱床学会誌
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.75-84, 1970
被引用文献数
3

筆者は石母狩湾堆積物中の粘土鉱物組成を調べ,その分布を規刷している主な要因が分凝作用であろうと推論した(塩沢,投稿中)。その推論を確めるべく,湾の主要構成粘土鉱物のモンモリロナイト・クローライト・イライト(代りにセリサイト)からなる分散系で分凝作用に関するある種の実験を行なった。<br> それによると,モンモリロナイトは懸濁液攪拌放置後の時間経過に伴って,懸濁液中で相対的に濃集し,クローライト(セリサイトもほぼ同じ)は逆に減少することが明かになった。この分凝作用は一般に塩分濃度と分散系中の粘土鉱物濃度の増加にともなって顕著になる。この結果は, Whitehouseら(1960) の単一鉱物の分散系で行なった実験結果からほぼ説明される。今回の実験結果は,石狩湾に関する筆者の推論が正しいであろうことを裏づけた。