著者
塩津 ゆりか
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.220-235, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
13

出産選択と就業状態による世帯の多様化は,出生率や資本蓄積に大きく影響する。子どもはまた,賦課方式の社会保障制度をとおして,正の外部性をもつ。そこで,子どもの外部性を内部化する手段として,児童手当拡充政策が考えられる。 本稿の目的は,世帯の多様性を考慮したうえで,児童手当の加給分の財源について,年金課税と労働所得税を想定し,それぞれが経済全体にあたえる影響を出生率内生化モデルのシミュレーションによって,明らかにすることである。 本稿の主な結論は,次のとおりである。児童手当の政策目標が出生率の回復ならば,ある程度以上の増税を実施するほうが,短期間で政策効果が得られる。定額で所得制限のない児童手当は,年金課税を財源とした場合,どのタイプの世帯であっても貯蓄を増加させる。もし,小規模増税ならば,共稼ぎで子どもをもつ世帯にとっては,子どもの外部性が十分内部化されないので,効用水準が低下する結果となった。