著者
塩田,教子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, 1986-12-20

卓袱料理の豚の角煮は, 常法では長時間かけて水煮してつくられるので, 高圧加熱による早煮法を検討した。先ず感応検査でほぼ同じやわらかさの角煮を得るための高圧加熱時間を求め, その角煮について物性, 脂肪含量および組織の相違を調べた。また一般家庭では豚皮はかたいので除去されるが, 高圧加熱した場合の嗜好や軟化に関係するタンパク質の動向を電気泳動で調べ, 消化率も求めて利用価値を検討した。1) 40分間高圧加熱後, 水を換えて再び20分間加熱した角煮(S3)は, 常法の4時間水煮(S1)とほぼ同じやわらかさの製品が得られた。機器による物性測定でも, ほぼ同じ性質をもつものであることを示した。2) 高圧加熱されたS3は, S1に比べて重量と脂肪含量は僅かに低値を示した。またガス消費量と調理所要時間は, 常法の45%と25%であった。3) S3の皮部の可溶性コラーゲン量は, S1の皮部とほぼ同量であり, また両者の可溶性タンパク質の電気泳動パターンもほぼ同じであった。4) 高圧加熱によると, 豚皮は短時間にゼラチン化し, 製品の口あたりをよくし, 消化率も高く, 利用価値が認められた。5) 組織は, S3の皮部のコラーゲン線維がほぐれて細分化し, さらに一部溶解していた。これが物性を口あたりよいやわらかさに変えた。肉部では結締組織が顆粒化し内筋周膜の間隙にも顆粒が充満し, これがもろさの原因と思われた。