著者
杉江 豊文 山本 弘敏 夏野 伸一 加我 正行 及川 清
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.773-778, 1987-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
31

小児歯科臨床で広く用いられている既製乳歯金属冠およびディスタルシューの組成金属であるNi,Co,Crの各イオンについて,その毒性を細胞培養法によって検討した.種々の濃度に調整した金属イオンを含んだ培養液中のヒト歯肉由来線維芽細胞の増殖および形態の変化を観察することにより次のようなことが明らかにされた。1)Ni,Co,Crの各イオンは,その濃度を増すにつれ,ヒト歯肉由来の線維芽細胞の増殖を抑制し,細胞の形熊に影響を与えてやがて細胞死が生じる。2)Ni,Co,Crの各イオンが線維芽細胞に障害を与える臨界濃度は,Niイオンについては12.5μg/mlと25.0μg/mlの間の値であり,Coイオンについては6.25μg/mlの前後の値, Cr イオンについては0.1μg/ml と0.5 μg/ml の間の値であると推定できた。従って各金属イオンの毒性の強さはCr>Co>Ni となる。