著者
外山 明
出版者
大阪経大学会
雑誌
大阪経大論集 (ISSN:04747909)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.93-117, 2021 (Released:2021-09-28)

半導体産業黎明期の1950年代に米国で発行された『トランジスタ・テクノロジ』という本がある。これはベル研究所とウエスタン・エレクトロニクス社が,発明して間もないトランジスタの製造技術を,技術援助契約(特許契約)をした企業に伝授するために発行した教本である。また,創業期のソニー(当時の社名は東京通信工業)が,国内他社に先駆けて同契約を結んで高額な特許使用料の対価として入手し,トランジスタ,そしてそれを使用したトランジスタラジオを早期に開発・発売をして世界に名を馳せるきっかけとなった本としても知られている。当時同社が受け取った『トランジスタ・テクノロジ』は,国内の多くの文献では全3巻と記され,言わば通説となっている。しかし,この通説は誤りであり,発行された背景や原書に記載された内容等を踏まえると全2巻が正しいはずである。本稿ではこの仮説を検証した上で,国内で誤った通説が広がった原因まで追究した。