著者
外山 美奈
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

研究目的:生命科学の教育現場において、生物材料を扱う能力が低下し生命現象そのものを理解できないことが問題になっている。我々の教育現場でも同様の状況であり、現状打破を目指し学生に生物に触れる機会を増やしたところ大きな改善を得た。また地域貢献事業を通して、初等中等の生徒に生物に触れる機会を与えると、青少年期教育より効果が絶大であることを体験した。そこで大学と地域中学との連携を確立し、「ニホンミツバチ」を材料として生物に触れる機会を与え科学への興味を増大させる教材開発を目的とした。研究方法:プレゼンテーションソフトによる、ニホンミツバチの紹介、飼育法および実験法のテキストを作成し、近隣中学校科学部の生徒達を対象に講義と実習を行い、個体の行動と社会性を学ばせた。その後、生徒達に実習で学んだこと、考察、感想についてまとめさせた。このフィードバック結果を基に、本教育法をより効果的に行うための方法を検討し、本年度作成した教育材料を改善した。研究成果:講義を聴講した段階ではハチは恐ろしいと思っていた生徒達が多かったが、実際に近くで観察させると、「ニホンミツバチ」はおとなしくて可愛いと感じるようになった。また天敵であるスズメバチを集団で熱殺することや、働き蜂の寿命は約30日であり日齢で仕事の役割が変わることを伝えることで、命の大切さを学んだ。生徒達の自然や生命への認識が変化したと思われる。比較的扱い安い「ニホンミツバチ」は理科的思考力を養う理科教育に適していることを実感した。ただ、中高生は学業や部活動で忙しく、なかなか時間が取れないという問題がある。理科的思考力向上という目的を達成するためには、継続的な観察実施も重要である。今後は、ウェブカメラを巣箱内外に設置し情報を自動記録し、離れた場所や後からでも観察ができる装置を構築し、生物に触れる現場教育と併用することでより効率的な教育法を確立したい。