著者
多屋 淑子 成田 千恵
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、重症心身障害児(者)の日常生活のアメニテイ向上を衣服により支援し、障害者と介護者のQOL向上を最終目的としている。複数名の重症児(者)と健常者を対象に、非侵襲にて長時間の生体情報モニタリングを行った結果、本研究で対象とした最重度の複合障害を有する重症児においても、サーカディアンリズムや体温調節機能が観察され、刺激による精神性発汗活動を有すること、また低体温の場合にも日常的に発汗活動の可能性が示唆された。本研究による生体モニタリングは、衣服の温熱的快適性の評価、衣服の肌触りや衣服の身体への圧迫感などから生じる不快感を客観的に評価することを目的として行ったが、着心地の評価に加え、日常生活上の種々のストレスの有無を客観的に判定する手段としても有効であることがわかった。また、本研究における長時間の生体情報モニタリングから、重症児(者)では手足末梢部の皮膚温低下が顕著である場合が観察され、温熱的に快適な状況を提供するための手段として、靴下の効果的な着装方法を提案した。重症児(者)の衣服の留め具である面ファスナの接着強さを実現するための方法について検討した。さらに、介護現場の看護師との意見交換を行いながら、寝たきりの重症児(者)に望ましい衣服の試作を行った。以上から、重症児(者)に望ましいデザイン、素材、個人の嗜好等を考慮した衣服を、製作し、重症児(者)をモデルとしてファッションショー形式で提案した。