- 著者
-
斉藤 隆
多根 彰子
- 出版者
- 独立行政法人理化学研究所
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2012
T細胞の活性化は、副刺激シグナルによって正に負に制御されている。特に負の制御は、活性化が過剰になり自己免疫疾患にならないようにフィードバック制御として重要な役割を果たす。抑制受容体として重要なPD-1によるT細胞活性化のダイナミックな抑制制御のメカニズムを解析した。T細胞活性化は、TCRミクロクラスターによって誘導されることを明らかにしてきたが、抑制受容体PD-1は、T細胞活性化に伴ってTCRミクロクラスターと共存し、TCRがcSMACを作ると、PD-1もCD28と同様にcSMAC(CD310w領域)に集結した。PD-1は活性化に伴ってリン酸化され、SHP2をリクルートしてTCRミクロクラスターに集結したTCR直下のシグナル分子の脱リン酸化を誘導した。PD-1による活性化抑制がTCRミクロクラスターに共存することが必須かを解析するために、細胞外領域の長さを変えた種々のPD1変異分子を作製発現させて、その局在と機能を解析した。細胞外領域の大きな分子は、TCRミクロクラスターとも共存できず、SHP-2をリクルートせず抑制活性を持たなかったのにたいして、Igドメインが2つまでの小さな分子では、ミクロクラスターに存在しSHP-2をリクルートして、活性化抑制を示した。このPD-1ミクロクラスターを介した活性化抑制を、より生理的条件下で誘導されているか、を解析した。抗原ペプチドにて頻回免疫したマウスのT細胞は、PD1を高発現し、抗原刺激への反応が抑制されたアナジー状態にある。PD-L1存在下で刺激するとPD-1はTCRミクロクラスターに局在し、SHP-2をリクルートして活性化抑制をするが、抗PD-L1抗体でブロックすると、ミクロクラスター局在も抑制活性も見られなくなった。これらより、PD-1は活性化にともなってダイナミックに動態し、PD-1がミクロクラスターに存在することによってSHP2を介して、PD-1によるT細胞活性化の抑制制御に重要であることが判明した。