著者
山口 二郎 杉田 敦 遠藤 乾 空井 護 吉田 徹 渡辺 将人 木宮 正史 川島 真 遠藤 誠治 高安 健将 村上 信一郎 宮本 太郎 小川 有美 中北 浩爾 水野 和夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

20世紀後半に民主主義国で確立された二大政党制、二極的政党システムにおける政権交代というモデルは、1980年代の新保守主義的政治、1990年代後半の中道左派の復活までは、順調に作動し、民意の吸収と政策転換という効果をもたらした。しかし、2000年代に入って、経済のグローバル化の一層の進展と、雇用の不安定化や格差の拡大は政治的安定の基盤をなした経済的安定を侵食した。その結果、政権交代に対する国民の期待が低下し、ポピュリズムが現れた。こうした危機を打開するためには、従来の左右を超えた政党再編が必要とされている。
著者
廣田 照幸 森 直人 寺脇 研 二宮 祐 丸山 和昭 冨士原 雅弘 小野 方資 末冨 芳 佐久間 亜紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 布村 育子 植上 一希 筒井 美紀
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1、関連文献・史資料の収集・吟味:日教組の運動の範囲が多岐にわたるため、大学院生や学部生にアルバイトとして利用しながら、7つの作業グループのそれぞれの主題に沿った関連文献・史資料の収集・吟味を体系的に行った。2、日教組所蔵史料の検討と整理:研究の基礎史料を利用可能な状態にしていくため、平成29年度は過去のプロジェクトにおいてデジタル化した資料を再整理しつつ、新たに当面の研究に必要な史料を選定してデジタル化作業を行った。教育制度検討委員会(第一次・第二次)関係及び1950年代後半期の中央執行委員会プリントなどを対象にした。単組史料も部分的に行った。3、1954年の中央執行委員会の議事録に綴じ込まれた中根式速記の史料を発掘してデジタル化を行うとともに、速記解読者に依頼して、解読可能性について検討をしてもらった。4、聞き取り調査:日教組OB及び文部省OBに対し手の聞き取り調査をおこなった。記録はテープ起こしと編集作業を行い、ご本人の確認を経て、聞き取り資料として確定させた。5、全体会合:全員が集まる研究会を定期的に開催し、本研究課題に関連する分野の専門家をゲスト・スピーカーとして招聘してレクチャーを受けながら、7つの作業グループから、順次、研究報告をしてもらった。また、全体会では、研究全体の進め方について協議を行った。6、チーム会合・グループ会合:2つのチーム、7つのグループごとに、定期的な会合をもち、具体的な課題に向けた研究を進めた。7、学会発表:日本教育学会、教育史学会などにおいて研究成果の報告を行った。学会発表をふまえて、論文化に向けた打ち合わせも行っている。また、学会誌等に載りにくい主題の論考等を集めて、第一次報告書を編集・印刷した。
著者
廣田 照幸 佐久間 亜紀 筒井 美紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 植上 一希 末冨 芳 布村 育子 森 直人 小野 方資 宇内 一文 丸山 和昭 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 古賀 徹 岩田 考 太田 拓紀 清水 唯一朗 二宮 祐 冨士原 雅弘 佐藤 晋平 田中 真秀 金子 良事 長嶺 宏作 香川 七海 中嶋 亮太 高木 加奈絵
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果として、a)初期教育研究大会の成立と講師団選出過程、b)日教組結成から1950年までの法的な位置づけと政治的な立ち位置の変容、c)「教え子を戦場に送るな」のスローガンの成立過程、d)人材確保法の成立過程、e)日教組におけるストライキ批准体制の確立、f)1973年春闘におけるストライキ戦術と交渉の解明、g)連合加入をめぐる400日抗争の解明、h)1995年の文部省と日教組の和解のプロセス、i)国際労働運動における日教組の位置を明らかにした。以上の点から、労働運動体と教育運動体としての日教組との二重性をふまえ、日教組の多面的な運動、それぞれに与えた影響を実証的に明らかにした。
著者
大沢 真理 シャイア カレン マルガリータ エステベス=アベ 阿部 彩 金 英
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

日本の生活保障システムは、先進諸国の中で最も強固な「男性稼ぎ主」型であり、政府の所得再分配が貧困を削減する効果が、就業者の多い世帯や子どもにとってきわめて弱く、効果がマイナスである場合も少なくない。労働力人口の減少が憂慮される社会としてきわめて非効率で不合理なシステムであること、しかし所得再分配の効率性を高めれば、税・社会保障負担を増すことなく国民の生活を改善できることも、明らかになった。2014年2月には福井県において社会的排除に関するアンケート調査を実施した。働き者の福井の女性が、より働きがいを感じ、地域活動にも参加する条件について示唆を得られた。
著者
新井 紀子 影浦 峡 菅原 真悟 松崎 拓也 犬塚 美輪 尾崎 幸謙 登藤 直弥 藤田 彬
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度の研究推進計画に基づき以下のことを実行した。① 読解力の認知プロセスモデルの精緻化、及び読解力を構成する要素スキルを再検討し、係り受け解析・照応解決・同義文判定・推論・イメージ同定・具体例同定(辞書)・具体例同定(理数)の7タイプの領域のスキルを選定した。4万5千人の受検者を対象として推計したそれぞれの問題タイプの能力値の相関係数は0.4から0.7であり、それぞれ関連した読解力の異なる要素を測ることに成功しているといえる。また、個々のタイプ内の一貫性は0.4から0.6程度であり(0.3以上の場合は妥当)、一貫性がある作問ができているといえる。②申請通り問題を作問し、そのうち約半数の千問については難易度b値の推計を終了し、CATで出題できる準備が完了した。加えて、本申請時に予定していた通り、本テストを社会実装するための一般社団法人「教育のための科学研究所」を発足させ、本科研費において考案した問題の仕様書に基づき、社団においてボランティアを求め追加の作問を実施させた。③②に基づき、CAT版で読解力の能力値をより精度高く推定するためのシステムを考案し、社団法人「教育のための科学研究所」と連携して、社会実装の道筋をつけた。④全国で189の機関において本調査を実施し、4万5千人が受検した。特に、機関として受検した48の高校の読解能力値の平均と学校のいわゆる入試偏差値との相関係数が、すべての読解力要素において、相関係数0.8を上回ったことから、本テストで測る読解力は総合的学力と極めて強い関係があることが示された。本研究成果は認知心理学のトップ会議であるCogSci2017で採択・発表されるとともに、日本教育心理学会の特別セッションとして成果を公開した。また、多数のメディアに取り上げられ、招待講演を受けた。
著者
中島 利博 山野 嘉久 八木下 尚子 樋口 逸郎 赤津 裕康 川原 幸一 上 昌広 丸山 征郎 岡田 秀親 荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

われわれがリウマチ滑膜細胞より発見した小胞体関連E3ユビキチンリガーゼ シノビオリンは遺伝子改変動物を用いた研究により、少なくともマウスにおいては関節症発症の必要十分因子であることが証明されていた。また、関節リウマチの新薬である抗TNFα製剤の感受性を決定するバイオマーカーの可能性も示されている。一方で、シノビオリンの完全欠損マウスは胎生期において致死であることも明らかとなっていた。したがって、これまで成獣における同分子の生理機能の解析、並びに関節症における分子病態を明らかとすることが不可能であった。そこで、本研究事業により、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これらの点を明らかにすることを目的とした。その結果、シノビオリンのコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死でのみならず、出生後に同遺伝子をノックアウトした場合でも致死であることを発見した。さらに、その過程で線維化・慢性炎症に非常に密接に関与することが示されている(論文準備中)。現在、その恒常性維持にシノビオリンが必要と考えられる関節などの臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析を行っている。上記のようにシノビオリンの機能制御は関節リウマチのみならず、線維化・慢性炎症を基盤とする疾患の創薬標的であることは明白であろう。われわれの有するシノビオリン抑制剤がマウスにおける関節炎モデルに有効であることを証明した(論文投稿中)。さらに、本テーマは橋渡し研究として米国のユビキチンに特化した創薬系ベンチャー プロジェンラ社との創薬開発プロジェクトへと進展した。
著者
野村 大成 藤堂 剛 斉藤 直 本行 忠志 中島 裕夫 杉山 治夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

1. 異なる線量率(0.57Gy/分〜0.0002Gy/分)で発生腫瘍の異なる2系統のマウスC3H/HeJ,C57BL/6Jに、6週齢より7日間隔で4回Co-60ガンマ線を照射(総線量2Gy,6.8Gy)し、腫瘍発生における線量-線量率効果係数(DDREF)を求めた。その結果、(1) 低線量率照射により、全腫瘍および固型腫瘍発生の遅延(両系統2および6.8Gy)と白血病発生に顕著な線量率効果が認められた。DDREFは6.8Gy照射で20〜40、2Gy照射で約2であった。(2) 固型腫瘍については、全固型腫瘍発生率でみるとC57BLマウスで線量率効果を認めるが、C3HマウスではDDREFは1に近かった。しかし、卵巣腫瘍が高発するため、卵巣腫瘍およびC57BL/6Jマウスに自然発生する細網肉腫を除外したが、傾向は変わらなかった。臓器別にみると、肺、乳腺、下垂体腫瘍に線量率効果が認められ、DDREFは2〜3(両系統)であった。2. X線、^<60>Coγ線、^<252>Cf中性子線による胎児死、奇形、がん、突然変異の同一個体検出をPTHTF_1法を用い行った。X線では、いずれも明確な線量率効果を認めた。また、^<252>Cfによる突然変異とがん発生のRBEは、^<60>Coγ線とX線に対し、いずれも6〜9であった。3. DNA二重鎖切断欠損培養細胞と野生型培養細胞を用いた、^<60>Coγ線による細胞致死効果の線量率効果は、大部分が二重鎖切断の修復によるものだが、一部それ以外のプロセスがある。4. 微量放射能によるヒトでの遺伝子変異の調査:チェルノブイリ事故による放射能被曝者(放射性物質除去作業者、汚染地域住民など)の血液採取し、白血病早期発見のため、WT1遺伝子発現の定量と分子レベルでの遺伝子変異の高感度検出法の開発を行った。
著者
近藤 二郎 前川 佳文 馬場 悠男 中井 泉
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

エジプト、ルクソール西岸アル=コーカ地区で、平成29年12月~平成30年1月に、さらに平成30年3月の2回にわたり調査を実施することができたことで、前年度同様、研究を進展することができた。当該地区には、第18王朝アメンヘテプ3世治世末期の高官ウセルハトの墓(TT47)の大規模な前庭部を中心として、数多くの岩窟墓が存在している。しかしながら厚い堆積砂礫に覆われていたため、未発見の岩窟墓が存在していることが想定された。これまでの調査によって、ウセルハト墓の前庭部の南側からKHT01とKHT02(コンスウエムヘブ墓)が、そして前庭部北東部からKHT03(コンスウ墓)の3基の岩窟墓を新たに発見することができ、従来の当該地区における岩窟墓の立地に関して新知見を売ることができた。平成29年度の調査によって、さらにKHT02(コンスウエムヘブ墓)前庭部の南側とTT47(ウセルハト墓)の前室南側上部の2か所において、新たな岩窟墓の存在を確信する箇所を確認することができた。これら2か所には、周辺の岩窟墓の状況から、いずれも第18王朝トトメス4世時代に属する岩窟墓の存在が予想される。そのため今後の調査により、この地区における岩窟墓の造営の変遷が一層明確になることが期待される。平成28年度に実施した大規模な堆積砂礫の除去作業によって出土した膨大な量の葬送用コーンの分析を通じて、当該地域における未発見の岩窟墓の複数の所有者の推定を可能とすることができた。これらの成果をまとめ発表することができた。平成29年度には、KHT02(コンスウエムヘブ墓)を中心として、岩盤工学の専門家と壁画の修復家の協力を受け、岩窟墓内部の壁面の保存修復作業を重点的に実施し、大きな成果をあげることができた。この結果、今後の岩盤脆弱で発掘作業が困難な部分の調査に対する目途を立てることを可能にした点でも意義は大きいと考えられる。
著者
窪寺 恒己 天野 雅男 森 恭一 青木 かがり 篠原 現人 西海 功 大泉 宏 庄司 隆行
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中深層性大型イカ類に関しては、特殊水中ビデオカメラ・ライトを開発し深海の環境を乱すことなく、それらの行動生態を記録し生物量の推定を試みた。2011年には小笠原沖でNHKと共同して有人潜水艇から世界初となるダイオウイカの生態観察・撮影に成功した。一方マッコウクジラに関しては、加速度マルチロガーと超小型水中カメラロガーを直接取り付けることにより、潜水中の行動を3Dで捉えることに成功し、餌となる大型イカ類を追跡・捕獲する行動パターンを明らかにした。また、深海の腐肉食性ベントスの蝟集実験を行い、蝟集物質の科学的組成を解析するとともにベントス群集の時間的変遷を明らかにした。
著者
加藤 博文 石田 肇 吉田 邦夫 佐藤 孝雄 米延 仁志 ハドソン マーク 米田 穰 安達 登 増田 隆一 長沼 正樹 深瀬 均 木山 克彦 江田 真毅 岡田 真弓 木山 克彦 江田 真毅 岡田 真弓 長沼 正樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究では、アイヌの集団的・文化的形成過程において海洋狩猟民文化の強い影響が社会文化伝統にも、集団的にも、存在したことを示唆する豊富な資料を提供することができた。浜中2遺跡の調査では、海獣儀礼の伝統が先行する先史文化から連続して継承、発展されアイヌ文化の中へ取り込まれていくことが考古学的に提示された。集団的な系統性については、先行研究で示唆されていたオホーツク文化の関与を補強する資料を得ることができた。提示されたアイヌ民族の集団形成性の複雑さは、集団のアイデンティティの形成過程や変遷についても、社会・経済・政治的文脈での検討の必要性を示唆している。今後も得られた資料の調査研究を進めていく。
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
石井 晃 奥村 和 有澤 光弘
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

担持型触媒として鈴木宮浦カップリング反応などに利用できるゼオライト担持Pd触媒と硫化金基板担持Pd触媒をターゲットに、計算物理学と実験の両面から研究した。USYゼオライトに担持させたPd触媒は鈴木カップリング反応を起こし、Pd0-PdO/USYを熱処理すると,PdOが活性種になることがわかった.硫化金基板Pd触媒も電顕・XAFS実験と計算からその構造が明らかになった。また、計算からNi触媒も可能であることが示唆され、試行実験を裏付けた。
著者
石川 准 松原 聡 湯瀬 裕昭 菊池 尚人 松原 洋子 山口 翔 南谷 和範 河村 宏
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

100名の参加者による共同自炊型電子図書館実証実験を行った。情報提供施設に裁断・スキャン・OCR作業を委託し、3年間で1052冊をテキスト化した。参加者へのアンケート調査を毎年実施し、満足度や課題について分析を行った。参加者のコミットメントとインセンティブに影響を与える要素を検証するため、見出しマークダウン対応の読書アプリの作成や、OCR認識精度向上のための誤り補正ソフトウェアの開発を行い、その有効性を検証した。アメリカのBookshare、フランスの国立国会図書館、ジュネーブ国際電気通信連合において現地調査を実施し、電子書籍のアクセシビリティを推進するための制度・政策に関して知見を得た。
著者
佐倉 統 平石 界 池田 功毅 中西 大輔 横田 晋大 三浦 麻子 小森 政嗣 松村 真宏 林 香里 武田 徹 水島 希
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

放射線リスクの認知特性と社会内拡散動態を明らかにし、風評被害や差別の抑制に貢献することが目的である。個人の認知的特性を対象とする行動免疫班の実験は、放射線リスクに対する忌避感情が当初の予想より強固で制御困難であることを明らかにした。放射線リスク関連情報のツイッターでの動態を解明するソーシャルメディア班は、放射線についての否定的感情が強力であり、他の災害リスクと異なる拡散パターンを確認した。抑圧的でないリスク管理の方途を考察する社会実装班は、感染症などの過去の風評被害や差別の事例との比較分析やメディア論的考察をおこなった。研究遂行および成果発表は福島の研究者や生活者と共有することを心がけた。
著者
高橋 均 荒 このみ 山本 博之 増田 一夫 遠藤 泰生 足立 信彦 村田 雄二郎 外村 大 森山 工
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

戦後、欧米先進諸国に向けて、開発途上国出身の多くの移民が流入し、かれらを文化的に同化することは困難であったため、同化ではなく統合を通じてホスト社会に適応させようとする≪多文化主義≫の実験が各地で行われた。本研究課題はこのような≪多文化主義≫が国際標準となるような≪包摂レジーム≫に近い将来制度化されるかを問うものである。結論として、(1)≪多文化主義≫の背景である移民のエンパワーメントは交通・通信技術の発達とともになお進行中であり、いまだバックラッシュを引き起こす危険を含む。(2)第一世代はトランスナショナル化し、送出国社会と切れず、ホスト社会への適応のニーズを感じない者が増えている。(3)その反面、第二世代はホスト社会の公立学校での社会化により急速に同化し、親子の役割逆転により移民家族は不安定化する。このために、近い将来国際標準的な≪包摂レジーム≫の制度化が起こる可能性は低い。
著者
野村 大成 梁 治子 藤堂 剛 村上 昌雄 藤川 和男 吉留 克英 中島 裕夫 赤城 卓
出版者
独立行政法人医薬基盤研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射線、化学物質の人体の直接影響とそのメカニズムについて、我々のヒト臓器・組織長期維持システム(Super-SCID マウス)を用い、がん等ヒト疾患組織、正常肺組織への直接影響(増殖抑制、遺伝子発現変化)を検出し、これらヒト組織での放射線源(X/ガンマ線、粒子線、重粒子線)による放射線生物効果比を新たに求めるとともに、そのメカニズムについて、炭素線がヒト正常肺に特異的に誘発する遺伝子発現の変化は、ヒト甲状腺組織が中性子線等に特異的に反応した遺伝子群と異なることを明らかにした。極微量TCDDがヒト甲状腺ホルモン分泌を抑制することも明らかにした。
著者
田島 和雄 千葉 仁志 宝来 聰 園田 俊郎 妹尾 春樹
出版者
愛知県がんセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は東南アジア地域の中でも南西日本で特異的に集積している。本研究の民族疫学的調査によりアジア大陸に由来する南米先住民族は、HTLVのウイルス学的亜型とリンパ球抗原の免疫遺伝学的特性から、アンデス群と他の低地群に大別でき、アンデス群は免疫遺伝学的背景が南西日本のHTLV-I保有者群と極めて類似することが明らかになった。南コロンビアからチリやアルゼンチン北部のアンデス山脈に居住する高地民族は日本人と同じHTLV-Iを有し、オリノコ川、アマゾン川、パタゴニアなど低地に広く分布する先住民族は日本人に見られないHTLV-II型を有する。両者はHLAのクラスI、II遺伝子からみても遺伝学的起源を異にする。さらに、チリ北部に埋蔵されている先住民族の先祖と考えられるミイラの骨髄組織から抽出したHTLV-IのLTR、Px遺伝子のクローニングに成功し、千五百年前のミイラのHTLV-Iとアンデス先住民族のHTLV-I、および日本のアイヌ人らのHTLV-Iなどが遺伝学的に近縁関係にあることを示した。一方、中国チベット自治区は政治的に不安定要素が多く、チベット族の血液を採取することは容易でなく、チベット族を対象とした科学的に有用な免疫遺伝学的情報を提供できる研究成果はこれまでなかった。本研究では壮大なチベット高原の中で特に周辺と隔離された秘境奥地に居住しているいくつかのチベット部族の協力を得て、チベット自治区の衛生庁や重慶市中国第三軍医大学の輸血部などと共同で、チベット高原の東部、西部の僻地に棲むチベット族から血液を採取することができた。血清検索によりチベット族はHTLVを保有しないがHBVに高率に感染しており、それらのサブタイプはタイや韓国で見られるC型がほとんどで、インドネシアなどで多く見られるB型は見られなかった。HBV感染者の国際的広がりや地域特異性を示す遺伝学的サブタイプについてはこれまでにも多くの研究成果が報告されているが、HBVのサブタイプから見るとチベット族はHTLV-Iを有さない中央アジアのモンゴロイド集団と判明した。
著者
山下 俊一 高村 昇 中島 正洋 サエンコ ウラジミール 光武 範吏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ周辺の海外連携研究拠点を中心に、放射線誘発甲状腺がんの分子疫学調査を継続し、共同シンポやワークショップを開催した。チェルノブイリ甲状腺がん関連の英語単行本を共同出版し、各種招聘事業と被ばく医療研修指導を行なった。放射線誘発甲状腺がんの感受性候補遺伝子群のSNPs解析を中心に、分子疫学調査と分子病理解析を行い新知見を報告した。これらの成果を、福島原発事故後の県民健康調査事業における甲状腺検査の結果解釈に応用し、福島とチェルノブイリの甲状腺癌の違いを臨床像や分子遺伝学的見地から明らかにした。
著者
藤井 聡 竹村 和久 吉川 肇子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

いかなる社会システムにおいても,多様な価値観が共存している.こうした価値観の多様性は,共存共栄によって社会システムの潜在的な環境適用能力を確保し,より望ましい発展を遂げる重要な条件となる.しかし,一方で,深刻な対立を引き起こす"時限爆弾"でもある.例えば,現在深刻な問題を迎えている米国におけるテロ事件も,価値観の対立が生み出した悲劇と捉えることが出来よう.そして,平和と言われる我が国でも,局所的な価値の対立は近年の重要な社会問題を引き起こしている.本研究では以上の認識に基づき,人々の価値観,ならびに合意形成が問題となる社会行動についての調査を行い,社会行動における人々の価値観の演ずる役割を明らかにした.具体的には,原発事故や医療事故などの複数のリスク問題を例にとり,それぞれのリスク問題についてどのようにすれば「安心できるか」という質問を行った.その結果,そのリスクの規模が小さく,かつ,その確率が低い,といういわゆる客観的なリスクを最小化するような施策だけではなく,リスク管理者が「信頼できる」という条件がきわめて重要な役割を担っていることが明らかとなった.さらに,リスク管理者が関係する不祥事が発覚した場合,信頼は低下すること,ならびに,信頼が低下することで,リスク管理者を監視使用とする動機が増強されることも明らかになった.ただし,リスク管理者の対応が誠実であれば,信頼低下は抑制できることも示された.