著者
多田 充裕
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、低出力レーザー照射の生物学的効果についてラットを用いたin vivo実験系を応用して実証することを目的とし、Type 2 collagenのブースター免疫による膝関節リュウマチの病態モデルを作成して半導体レーザー照射と自由電子レーザー(FEL)照射を行い、低出力レーザー照射による炎症抑制効果について検討を行った。実験動物はLewis系ラットを用い、初回感作としてウシII型コラーゲンを含むFreund's Adjuvant Incompleteのエマルジョンを背部に皮内投与し、初回感作の7日後に同エマルジョンを尾根部より皮内投与して関節炎を発症させた。低出力レーザー照射装置はGa-Al-As半導体レーザー照射装置(松下電器産業)を、FELは日本大学量子科学研究所電子線利用研究施設に設置されているものを用いた。レーザーの出力は2.2Wで総照射エネルギー密度は5J/cm^2であり、照射時間は500秒とした。動物は1群5匹として3群にわけ、第1群は無処置群、第2群はコラーゲン感作を行い数日おきにレーザー未照射で動物を固定するだけとしたレーザー未照射群、第3群はコラーゲン感作を行い数日おきにレーザー照射したレーザー照射群とした。実験期間中は、動物の一般状態を毎日観察し、週1回体重測定および関節部分の腫脹をノギスで測定し、頚静脈より血液を採取した。その結果、いずれの低出力レーザー照射によっても、実験的に引き起こされたラット後肢の腫脹を抑制することが認められた。また、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6の血清中の濃度を測定したところ、レーザー未照射群に比較して照射群で有意に低下していた。これらの結果より、低出力レーザー照射によって腫脹抑制効果が得られたものと示唆され、低出力レーザー照射は副作用のない非侵襲的な抗炎症効果を期待しうる治療法であることが示唆された。