著者
大貫 文 齋藤 育江 多田 宇宏 保坂 三継 中江 大
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.43-50, 2011 (Released:2012-06-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究は,平成17年及び平成18年に,東京都内の26オフィスビルにおいて,空気中のたばこ煙由来化学物質濃度を測定した。空気の採取は,(a)喫煙室,(b)喫煙室近傍の非喫煙場所,(c)事務室等の非喫煙室で行った。測定化学物質は,ニコチン,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,プロピオンアルデヒド,トルエン,ベンゼン,浮遊粉じん(PM)及び一酸化炭素(CO)であった。調査の結果,ニコチン濃度の最大値は,(a)267 μg/m3,(b)16.7 μg/m3,(c)1.2 μg/m3,検出率は(a)100%,(b)38%,(c)4%であった。非喫煙場所からニコチンが検出された原因としては,たばこ煙が喫煙室から漏れたことや,喫煙者に付着し喫煙室外へ運ばれた可能性等が考えられた。PM及びCO濃度とニコチン濃度との関連について,喫煙室においては,比較的強い相関が見られ,PM及びCOの濃度を指標として,室内空気の清浄化を図ることが可能と推察された。一方,喫煙室近傍の非喫煙場所においては,喫煙室と異なり相関が弱く,PM及びCOの濃度からニコチン濃度を推測することが困難であることが判明した。