著者
多田 旭男 岡崎 文保
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

種々の無機多孔質基材に触媒金属水溶液を含浸させ、乾燥・熱分解を行なって細孔内に触媒金属酸化物微粒子を形成させた後、反応管に入れてメタンガスと500℃以上で接触させることによりまず金属酸化物微粒子を金属微粒子に還元し、続いてそれらの上でメタン分解反応を行なわせ、細孔内に導電性炭素粒子を蓄積させた。無機多孔質基材として市販発泡セラミック基材(イソライトレンガ)を用いた場合には反応温度が800℃であっても基材が熱変形せず、所期の電磁波吸収特性を示した。しかし、無機多孔質基材として発泡ガラスを用いた場合、反応温度が800℃では基材が熱変形を起こすことが多かった(特にリサイクルガラス発泡体)。また触媒金属としてて鉄を用いたときには電磁波吸収特性がきわめて低かった。熱変形は基材の融点が低いためシンタリングを起こすこと、酸化鉄はガラスと反応して鉄微粒子に還元されにくいケイ酸鉄を生成してメタン分解な阻害するため、導電性炭酸粒子を十分に生成しないことが原因であった。これらの知見は、無機多孔質基材として発泡カラス用いる場合には、シンタジンダしない温度でメタン分解反応を行なわせ、また触媒金属酸化物にはガラスとケイ酸塩を生成しにくいものを選択すればよいことを示唆する。実際、発泡ガラスに硝酸ニッケル水溶液を含浸させて酸化ニッケル粒子を細孔に生成させた場合には熱変形を起こすことなく、良い性能の電磁波吸収体を製造できた。基材として一辺が7cm程度の正四角錐形イソライトを用い、含浸法で触媒金属酸化粒子を細孔に形成させてメタン分解を行なった場合、炭素粒子濃度は表面部で高く内部では低くなった。それでも、その電磁波吸収特性は市販品に匹敵した。基材内外の炭素粒子濃度差は基材サイドが小さくなるほど縮まる傾向が見られたので、我が提案する方法は基材が小型化、平板化する高周波帯域用電磁波吸収体の製造に適していることがわかった。