著者
多谷 虎男
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:00471798)
巻号頁・発行日
vol.1961, no.76, pp.31-40, 1961-09-25 (Released:2009-12-18)
参考文献数
1

従来, 緩和曲線の形状についての理論では, 車両運動をその重心運動で置き換え, かつこの質点が軌道中心線上を軌道面に密着しつつ走行することを暗に仮定していた。しかし実際には車両重心は平面的にはボギー中心を結んだ弦の中点の画く軌道上を運動し, かつ立面的にはカントの存在のために, さらに軌道中心線よりもかなり曲線内側に偏った曲線上を走行する。従って軌道中心線と車両重心の運動軌跡とは異なるものとして取扱うべきであり, 緩和曲線の形状の探究は車両重心の運動が円滑となるような軌道中心線の形状を求めることでなければならぬ。しかしながら他方, 一般に曲線半径Rはきわめて大きく, 仮に車両重心がわれわれの想定した軌道中心線より10~20cm程度偏った曲線上を走行しても, その曲率半径と元の曲率半径Rとの相違は, Rに比してきわめて小さいように考えられ, 従ってこのために生ずる遠心力の変動はほとんど問題とするに足りないのではないかという疑問が生じる。しかし十分に考察検討すれば決してそうではない。本稿では上述のような主旨にもとついて, まず重心軌跡緩和曲線 (重心の運動軌跡を円滑ならしめる軌道中心の緩和曲線) の一般式を誘導し, これをカントが直線てい減の場合, 半波長正弦曲線てい減の場合, 一波長正弦曲線てい減の場合, などに適用してこれらの諸種の場合に対応する重心軌跡緩和曲線形を求め, さらに変化平均速度の場合におけるカント直線てい減方式および円滑てい減方式の重心軌跡緩和曲線形を求めた。次にさらに進んでカント連続てい減の場合の重心軌跡緩和曲線を, 直線てい減, 円滑てい減の両方式についてかつ定速度および変速度の両方の場合について, 上述の単一重心軌跡緩和曲線の拡張組合わせとしてとして誘導した。なおまたこれらの緩和曲線に対するカントのつけ方として従来のわが国の慣行に対して合理的改革案を提案した。