著者
大内 秀雄
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.103-109, 2018 (Released:2018-09-07)
参考文献数
46

最近の医療の進歩の恩恵から成人先天性心疾患(adult congenital heart disease: ACHD)患者は急増し、一般の成人循環器外来で遭遇する頻度が増加している。しかし、その病態は一般循環器疾患と大きく異なることも多く、その対応にはACHD患者特有な病態の理解が必要である。後天性循環器疾患の病態が左心室機能不全に伴う左心系心不全で肺うっ血を伴うことの頻度が多いのに対し、ACHD患者では右心室機能不全に伴う全身臓器のうっ血を伴う頻度が高い。更に、後天性成人循環器疾患領域に存在しない特殊な循環病態が存在する。これらの循環病態の代表的なものに単心室血行動態であるフォンタン循環、体循環を支える心室や房室弁が必ずしも左心室や僧帽弁でない修正大血管転位や完全大血管転位に対する心房内血流転換術後の循環、そして心内短絡が存在し複雑な形態の心臓で未修復の心室により循環が支えられ、通常低酸素血症を有する循環がある。更に、特に複雑ACHD患者では上記の特殊な循環病態に加え、手術の侵襲は無視できなく心肺機能に大きく影響している。今回はこれら術後ACHD患者に共通する病態について概説する。