著者
冨岡 佳奈絵 大友 佳織 阿部 真弓 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2012 (Released:2012-09-24)

サツマイモは、加熱処理中にデンプンの糖化が進み、加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。サツマイモの糊化デンプンの性状が甘味と関連するかをみるために、異なる加熱方法で調理したサツマイモを組織化学的方法により調べた。 サツマイモを茹で、蒸し、オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を急速に凍結して、コールドミクロトームで薄切した。切片を過ヨウ素酸・シッフ液およびヨウ素液で染めた。標本を常光と偏光装置により観察した。 加熱により膨潤した糊化デンプンは、デンプン貯蔵細胞全体を満たした。茹で、蒸しおよびオーブンにおける貯蔵細胞内の糊化デンプンは、ヨウ素染色により黒褐色から赤色に染まり、電子レンジでは、糊化デンプンは青く染まった。赤色に染まった糊化デンプンに青く染まったデンプンが顆粒状に点在していた。青く染まったデンプンが貯蔵細胞間の一部に存在した。赤色に染まったデンプン貯蔵細胞は、200℃のオーブンで多く、140℃のオーブン、茹での順に少なく、蒸しでは茹でと同程度であった。糖度と甘味の程度は、200℃のオーブンで強く、140℃のオーブン、茹での順に弱く、蒸しでは茹でと同程度であった。電子レンジでは甘さがなかった。糖度と甘味の程度は、赤色に染まったデンプン貯蔵細胞と貯蔵細胞間の青く染まったデンプンの多寡と関連した。複屈折性を示す結晶が点在したが、結晶の多さと甘味の程度には関連性はなかった。加熱処理の違いによるサツマイモの甘さの程度は、糊化したデンプンのヨウ素染色における染色性の違いと関連した。