著者
大友 千夏子 高島 尚美
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-98, 2018-03-01 (Released:2019-03-29)
参考文献数
25

本研究は,胸部大動脈瘤(TAA; Thoracic Aortic Aneurysm,以下TAA と記す)で手術を受けた患者の手術前から退院後の体験を明らかにすることを目的とし,半構成的面接法を用い修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した.7名の分析の結果,術前は《自覚症状がない中で強いられる苦悩を伴う一者択一の手術決断》等をしていた.手術後,《予測とは異なるコントロール不能な体験への対処》をしながら,次第に《自分で自由に生活行動が行えることで回復を実感しはじめる》ことへと変化し,《手術の成果への空虚感を抱きながらの日常生活への仕方なしの受け入れ》をしながら《弱みを抱えながら元の生活に戻ることへの折り合い》をつけていた.TAA で手術を受けた患者の体験の特徴は,元々,自覚症状のない中で生死に関わる手術を受ける意思決定を迫られ,「不確かさ」が手術後の生活の質に影響を及ぼしていたと考えられた.