著者
藤野 智子 河合 桃代 清村 紀子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.18-32, 2022-03-31 (Released:2022-05-24)
参考文献数
31

【目的】急性・重症患者看護専門看護師(certified nurse specialist in critical care nursing;CCNS)のコンピテンシーを形成する要素と構造を明らかにする.【方法】無作為に抽出した関東圏内のCCNS 10名に半構造化面接をし,コンピテンシー・ディクショナリーを参考に分析した.【結果】コンピテンシー・ディクショナリーに示す,コンピテンシークラスターの尺度レベルの中央値と,抽出された尺度レベルの平均値の差を分析し,その差が大きいほど特徴的な要素と判断した.結果,『コアなコンピテンシー』に[雇用サービス重視]と[インパクト影響力],『サブ・コアなコンピテンシー』に[チームワークと協調]と[チームリーダー]のそれぞれ2要素を位置づけた.また,『コアなコンピテンシー』と『サブ・コアなコンピテンシー』を補完する『コンプリメントなコンピテンシー』の5要素と構造が明らかとなった.【結論】本研究で顕在化されたCCNSのコンピテンシーの要素と構造は,CCNSの教育や活動,自己分析の視点につながる可能性がある.
著者
坂木 孝輔 高島 尚美
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.57-65, 2018-03-01 (Released:2018-08-07)
参考文献数
21

本研究はICUにおける家族にとってのベッドサイドの写真の意味を明らかにし,看護介入としての写真活用の示唆を得ることを目的とした.ベッドサイドに写真を持参した重症患者の家族を対象に写真の意味について修正版グラウンデット・セオリー・アプローチを用いてデータ収集し分析した. その結果,家族にとっての写真の意味は,《日常の世界や家族との絆を繋ぎとめる証》《写真持参に伴う苦慮》《写真をきっかけにもたらされる哀しみ》《写真をきっかけにもたらされる喜び》《回復と回復支援への願いと危惧》の5つの局面が抽出された. 写真は,家族の保証や接近のニーズを満たし予期悲嘆を促進させ,衝撃を受けている時には危機を助長させうる意味を持っていた.家族の危機の段階や家族システムによって異なる写真の意味を認識し,意図的に写真を用いることの重要性が示唆された.
著者
伊藤 真理 栗原 早苗 榑松 久美子 多田 昌代 戸田 美和子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.11-21, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,集中治療室で終末期に至った患者に対し,急性・重症患者看護専門看護師(以下,CCNS )が,どのような倫理調整を行っているかを明らかにすることである.10 名のCCNS を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的手法で分析した.分析した結果,【終末期に至る予測と積極的治療の限界を見極める】【患者の意思確認が難しい状況でもあきらめずに意思をくみ取る】【一人で意思決定しなければならない家族の重荷を分かち合う】【代理意思決定をする家族の後悔を最小限にする】【患者の命をあきらめきれない家族の苦悩を引き受ける】【集中治療の延長線上で可能な限り望ましい看取りを行う】【困難な決断をしなければならない医師の重責を理解し対立を避ける】【患者を失う医療者のやるせない気持ちに対処する】など,13 カテゴリーが抽出された. CCNS は,患者を対象とした権利擁護,家族を対象とした代理意思決定支援と悲嘆ケア,患者と家族を対象とした望ましい死への援助,医療チームを対象とした終末期ケアにチームで取り組む土壌作りを担っていたと考えられる.
著者
榑松 久美子 黒田 裕子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.89-97, 2006 (Released:2015-05-19)
参考文献数
24
被引用文献数
1

突然に発症し,意識障害に至った患者の配偶者の心理社会的な体験を記述し,看護支援を探求することを目的とし,一事例に基づいて探究した.参加者は,くも膜下出血で集中治療終了後も GCS8 以下の意識障害が続いた 50 歳代女性患者の配偶者(夫)50 歳代 1 名であった.参加観察法,半構成的面接法に加え,診療録・看護記録から得たデータをもとに,患者の病状が変化した時点,および配偶者の言動が変化した部分に注目し,配偶者の体験の意味を解釈した.分析の結果,配偶者の心理社会的体験は,第 1 段階:妻が生き抜くことをひたすら望む,第 2 段階:意識が障害された妻を受け入れることに葛藤する,第 3 段階:意識が障害されてしまった妻の存在とは何かを考え,今後の人生をどのように生きていくかを模索する,の 3 段階に変化することが明らかとなった.この中で配偶者は,身近に存在する他の家族や状況を理解する医療者に支えられ,意識障害となった妻を受けとめていたと考えられた.各段階の特徴を読み取り,配偶者の安寧を目指した適切な看護支援を行う必要性が示唆された.
著者
中谷 美紀子 黒田 裕子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.42-49, 2010
被引用文献数
1

本研究の目的は,看護師が重要と認識しながらもニーズを満たすケア実践ができない心肺停止状態にある患者の家族ニーズと,その関連要因を明らかにするものである.初療経験満2年以上の看護師を対象に,研究者が作成した『看護師が測定する心肺停止状態にある患者家族ニーズ表(Family Needs of Cardiopulmonary Arrest Patients Inventory that Nurses Measure)』を用いて全国調査を実施し,有効回答数655名(59.8%)のデータを分析した.<br>対象者が重要と認識していてもニーズを満たすケア実践が最もできないニーズは「家族の存在を保証するニーズ」だった.ニーズ実践得点を用いて対象者を"高頻度実践群"(n=485,74.0%)と"低頻度実践群"(n=170,26.0%)に分類し比較したところ,"低頻度実践群"は"高頻度実践群"に比べて,有意に年齢が若く(p<0.01),看護師経験年数(p<0.01)と初療経験年数(p<0.05)が浅い特徴があった.しかし,"低頻度実践群"のうち,40歳以上でも初療経験5年未満の対象者は他の対象者に比べ,有意に実践できないと評価した.実践能力の向上を目指し,救急医療チームとして取り組む必要性が示唆された.
著者
中谷 美紀子 黒田 裕子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.34-41, 2010
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,『看護師が測定する心肺停止状態にある患者家族ニーズ表(Family Needs of Cardiopulmonary Arrest Patients Inventory that Nurses Measure;以下FNCPAI-NMと略す)』を作成し,信頼性・妥当性を検討することである.この尺度は,看護師が重要と認識してもニーズを満たすケア実践ができない家族ニーズを明らかにするものである.<br>既存の2つの家族ニーズ表と,看護師より得た情報をもとに暫定版を作成し,専門家による内容妥当性,パイロットスタディによる探索的因子分析で概念構成妥当性を検討した.その結果4因子が抽出され,「待っている間の家族の心身の安寧・安楽を求めるニーズ」「家族の存在を保証するニーズ」「患者ケアに責任ある言動を求めるニーズ」「医療者に真摯な対応を求めるニーズ」と命名された.これらは搬送から死亡に至る特徴的なプロセスに存在する家族を捉えることが可能であるといえる.内的整合性を表すクロンバックのα係数は,全体で0.85,それぞれの因子で0.82~0.68となり,十分な信頼性を確保した.最終的に4因子20項目の『FNCPAI-NM』が完成した.
著者
村川 由加理 池松 裕子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.43-50, 2011 (Released:2015-01-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は,ラザルスの心理学的ストレスモデルを基に,術前不安の喚起過程と看護援助の内容について整理した.医学中央雑誌から62の論文を選出し,術前不安と看護援助を「不安の素因」「影響要因」「看護援助」と位置づけ,研究結果や記述された表現をカテゴリー化した.不安の素因は『生命への脅威』『未知への脅威』『麻酔の作用・副作用への懸念』『術後の身体的苦痛への心配』など13に,影響要因は『個人的背景』『疾患/手術内容』『情報と知識』,看護援助は『認知の促進』『情緒的支援』『連携と調整』『リラクセーション』に分類された.手術が「脅威」であれば,不安の素因で示した反応がみられ不安が喚起される.この過程には影響要因が関連する.看護援助は不安喚起の過程のどの部分に働きかけるかは不明ではあるが一部で不安低減の効果が検証されていた.本研究により術前不安に関する研究疑問が焦点化され,系統的な研究の促進が期待される.
著者
江㞍 晴美 篠崎 惠美子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.11-20, 2021-03-31 (Released:2021-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

【目的】PICS(post intensive care syndrome,集中治療後症候群)アセスメントツールを作成し,妥当性と信頼性の検証を行う.【方法】先行研究に基づき78項目の作成と構成を行った.内容妥当性の検証は,各項目を「妥当である」~「妥当でない」の4段階で評価を求めた.信頼性の検証は,4事例の患者情報用紙と動画を見てもらい,ツールを用いた評価を求めた.【結果】内容妥当性の検証では,項目の採用基準を満たさなかった項目は,「70歳以上」「ICU日記」など8項目であった.「ICU日記」を除く7項目を削除したツール全体の妥当性は0.902であった.この結果よりツールの修正を行い,50項目に対して評価者間信頼性の検討を行った.ツール全体のκ係数は0.58で,中程度の一致度が確認された.正確度および所要時間を考慮し,最終的に37項目に修正した.【結論】PICSアセスメントツールの内容妥当性と信頼性を確認でき,PICSを日常的にアセスメントできる可能性が示唆された.
著者
古賀 雄二 茂呂 悦子 有田 孝 小幡 祐司 川島 孝太 雀地 洋平 古厩 智美 藤野 智子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.47-56, 2018-03-01 (Released:2018-06-02)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

適切な診療報酬請求を行う上で,せん妄患者の明確化は不可欠である.平成28年度診療報酬改定後のせん妄評価およびせん妄ケアの現状調査を行うことを研究目的として,「急性期に密度の高い医療を必要とする状態」の患者を多くケアするクリティカルケア看護専門団体(急性・重症患者看護専門看護師,集中ケア認定看護師,救急看護認定看護師)の全会員を対象に,平成28年度診療報酬改定後のせん妄評価・ケアの現状を調査した.Web式無記名式質問紙調査を行い,単純集計と質的記述的分析を行った.対象者数1,798人,回答率9.6%,有効回答率100%であった.周術期全体で継続的に妥当性・信頼性のあるせん妄評価は行われていなかった.診療報酬請求の適切性の向上のために,せん妄評価ツールの導入に加えて,ツール評価精度の維持が重要であり,学会等を通じた教育支援を行う必要がある.また,看護必要度を通した医療経済的・政策的なせん妄評価定着への支援は,多職種連携・チーム間連携が進むせん妄ケアの共通言語化を促し,患者ケアを推進する可能性がある.
著者
野口 綾子 井上 智子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.39-48, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
29
被引用文献数
9 7

本研究は,ICU で挿管下にLight sedation を受け,人工呼吸器を装着している患者の体験を明らかにすることを目的とした.ICU でLight sedation を受ける人工呼吸器装着患者6名の協力を得て,挿管中の参与観察と非構造化面接を行い,得られたデータは現象学的アプローチを参考に分析した.本質的要素は「見知らぬ環境や人に囲まれ無防備な状態でさらされる」「説明のない状況で感覚を駆使して状況を捉える」「命綱の呼吸器にしばられ異物感と時間や身体感覚の曖昧さに苦悩する」「鎮静薬で眠るより覚醒していたい」「自分にかかわる人や周囲を気遣う」「物言わぬ患者と扱われ伝えるチャンスがない」「任せてもらえない身の回りの事を自分でやりたい」「挿管患者は勝手に動いてはいけないらしい」「医療者にわかっていないように扱われる」の9つが抽出された.参加者は様々な感覚の中で思考し,行為し,自己像を維持している一方,医療者からの扱いで主体的な存在としての人間性が脅かされていた.医療者は,Light sedation 中の人工呼吸器装着患者の認知機能に対する認識を見直す必要がある.
著者
森島 千都子 當目 雅代
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.49-59, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

本研究の目的は,三次救急患者に対応する救急看護認定看護師の看護実践能力の構造を明らかにすることである.グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた分析の結果,以下のストーリーラインが見出された. 認定看護師は,危篤状態で搬送されてくる患者に対して【得られた情報から直観的に患者の成り行きを予測する】アセスメントを行っていた.このアセスメントが【先を見越した準備で緊急事態を取り仕切る】ことを可能にし,さらには【エビデンスによる緊急度と重症度から優先度を見極める】ことで,緊急事態の状況や医師の指示に振り回されることなく【医師・救急隊と共通認識を図りながら協働する】ことができ,救急対応を円滑に進行していた.また,救急対応と並行して【突然の出来事に家族を向き合わせる】ことも行っていた. このような救急対応は,【経験知の差で即応性が決まる】ため,経験が必要不可欠であり,本研究の認定看護師は,経験知を増やすことで臨機応変な対応や咄嗟の機転が効くといった実践を可能にしていた.しかし,現在の三次救急医療の現場は,【救急対応の制約とやむを得ない救命がある現場】であり,救急対応だけに専念できる状況にはない.こうした状況への対策として,実践能力を【ジェネラリストに還元することでエキスパート性を確認する】ことが,認定看護師の看護実践能力の維持につながっていた.
著者
大友 千夏子 高島 尚美
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-98, 2018-03-01 (Released:2019-03-29)
参考文献数
25

本研究は,胸部大動脈瘤(TAA; Thoracic Aortic Aneurysm,以下TAA と記す)で手術を受けた患者の手術前から退院後の体験を明らかにすることを目的とし,半構成的面接法を用い修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した.7名の分析の結果,術前は《自覚症状がない中で強いられる苦悩を伴う一者択一の手術決断》等をしていた.手術後,《予測とは異なるコントロール不能な体験への対処》をしながら,次第に《自分で自由に生活行動が行えることで回復を実感しはじめる》ことへと変化し,《手術の成果への空虚感を抱きながらの日常生活への仕方なしの受け入れ》をしながら《弱みを抱えながら元の生活に戻ることへの折り合い》をつけていた.TAA で手術を受けた患者の体験の特徴は,元々,自覚症状のない中で生死に関わる手術を受ける意思決定を迫られ,「不確かさ」が手術後の生活の質に影響を及ぼしていたと考えられた.
著者
山本 伊都子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.71-82, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

本研究は,ICU看護師は看護実践においてどのような困難さを感じているのか明らかにし,看護実践に対する困難さと職務継続意思との関連を明らかにすることを目的とした. ICUで働く看護師199名(平均年齢31.8歳,ICU経験年数56か月)を対象に自記式質問紙調査を実施した.調査内容である看護実践に対する困難さ,職務継続意思については,ICU看護師33名からのインタビューデータから質問項目を作成した.因子分析を行ったところ,看護実践に対する困難さは5因子,職務継続意思は1因子となり,Cronbach αはそれぞれ0.8以上が得られた. 対象者の74.9%は自分の1つ1つの行為が患者の命を左右していることにこわさを感じ,71.3%は瞬時の判断が求められることに難しさを感じていた.また,重回帰分析の結果,看護実践に対する困難さの1因子である「緊迫した状況に身を置きながら看護を続けることの難しさ」とICU経験年数は職務継続意思に負の影響を及ぼしていた.
著者
木下 佳子 井上 智子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.35-44, 2006 (Released:2015-05-19)
参考文献数
19
被引用文献数
4 3

[研究目的] ICU から退院した人々の生活に,ICU 入室中の体験がどのような影響をもたらしているのかを明らかにし,社会生活へ適応するための看護支援を検討する.[研究方法] 対象:ICU に 4 日以上滞在し,退院後 1 年以上経過した 25 名.データ収集方法:「ICU 入室中の体験」と「ICU 入室中の体験がもたらす現在の影響」について半構成的面接を行った.分析方法:ナラティブ・アナリシスの手法を用いる.[結果] ICU 入室中の体験を現実的な体験ととらえた記憶が鮮明な対象者と記憶が不鮮明な対象者に分類された.前者は,ICU 体験の影響はなかった.後者の非現実的な体験や記憶消失をした対象者は,真実を確認する作業やその体験に対する理由づけという努力を行い,その成否により,非現実的な体験によるとらわれや混乱,記憶消失によるとまどいを起こしていた.また,非現実的な映像や音が残存し再現している人もいた.[考察] ICU での非現実的な体験の予防,体験の語りを促す,記憶の再構築のための情報提供など,その体験を乗り越える努力とそれを支える家族の支援,さらに,退院後の支援体制確立の必要性が示唆された.