著者
大坪 晶
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.15-34, 2021-03-11

本論は、芸術実践活動としての「Shadow in the House」プロジェクトの概要解説から、並行して調査したアーカイブの分析をおこない、写真・映像論の射程から考察する。まず、アメリカ国立公文書館に、2018 年と2019 年に二度滞在調査をおこない、第二次世界大戦後の占領期日本の写真・映像のアーカイブの調査をおこなった。これまで特定の地域や、GHQ の部隊配備から検証した都市史としての調査はおこなわれてきたが、写真や映像アーカイブから検証する接収住宅や住環境史の変容に焦点を当てた調査はおこなわれていない。本稿では、占領期の歴史研究の中でも個人的・家庭的な事象として周縁化されてきた「接収住宅」に焦点を当て、収集した視覚資料の読み取りと分析から、現代日本で一般に普及している和洋折衷の生活様式や文化的背景の源流を読み取る。考察では、資料の読み解きを、写真論の射程から検討することで、非当事者に記憶を継承・分有してゆく可能性を探る。