著者
大城 美樹雄
出版者
経営哲学学会
雑誌
経営哲学 (ISSN:18843476)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.90-96, 2020-10-31 (Released:2021-06-08)
参考文献数
13

立命館大学にて開催された第36回経営哲学学会全国大会において統一論題として報告した内容に発表後の質疑応答等にて指摘を受けたことを踏まえて、まとめた。統一論題として掲げられた「地域活性化に向けたイノベーション:民間・自治体・N P Oの取り組みに着目して」ということを基に、自治体としての沖縄県の取り組みについて紹介し、沖縄と経営哲学の関係性についても論じた。沖縄県の取り組みとしては、商工労働部アジア経済戦略課における、次の2つの視点から沖縄県の地域イノベーションを推進しているのであるが、1) 沖縄県アジア経済戦略構想、2) 沖縄国際物流ハブ活用推進事業、のうち今回は、1) の取り組みについて考察した。さらに、これらの事業を展開するうえで、次のような5つの重点戦略を策定していた。①アジアをつなぐ、国際競争力ある物流拠点の形成、②世界水準の観光リゾート地の実現、③航空関連産業クラスターの形成、④アジア有数の国際情報通信拠点“スマートハブ”の形成、⑤沖縄からアジアへとつながる新たなものづくり産業の推進、以上5つである。また、特に島袋は「生命の尊厳を最高の価値基準とする」という表現にもあるように、「生命」に対する畏敬の念は強く持っていた。その思想、信条、哲学は、どこからきたのか、どこへ行くのか、について説明を丁寧に行なった。沖縄出身の島袋にとって、「ぬちどぅ宝(命こそ宝である)」ということは、沖縄が経験した「唯一の地上戦」ということのみならず、自らの戦争体験から出陣の際に「死」を覚悟したことにより、さらに強く「生命」への想いが強くなり、その「想い」は、経営哲学学会へと結実するのである。また、今年は、図らずしも本学会創設者の島袋嘉昌の生誕100周年(1920年 大正9年生まれ)という記念の年となっており、その意味でも、沖縄と経営哲学に関する創設者の「想い」を論ずるにふさわしい年となっている。