著者
古山 士津子 菊池 健次郎 大堀 克己
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.700-708, 2017-10-30 (Released:2017-10-30)
参考文献数
36

マグネシウム(Mg)は多くの酵素の補酵素で,Ca拮抗作用,抗酸化作用などを有する.糖尿病では,血清Mg(SMg)は低値をとり,これがインスリン抵抗性,腎症進展などに寄与するとされる.最近,SGLT2阻害薬によるSMg上昇が報告されているが,その機序はなお明らかではない.本研究では,その機序を2型糖尿病患者14例にSGLT2阻害薬カナグリフロジンを8.3ヶ月間投与し,その前後のSMgの変化をeGFR,尿細管のMg再吸収の指標である腎Mg排泄率(FEMg)との関連より検討した.その結果,有意にSMg,eGFRは上昇,FEMgは低下し,ΔSMg,ΔFEMgは,それぞれ前のSMg低値,FEMg高値例ほど大きく,また,ΔSMg大なる例ほど,FEMg低下度が大であった.以上より,2型糖尿病患者へのカナグリフロジン投与は,腎尿細管におけるMg再吸収増加を介してSMgを上昇させる可能性が示唆された.