著者
大場 雄介 津田 真寿美
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.138, no.1, pp.13-17, 2011 (Released:2011-07-11)
参考文献数
17

下村脩博士によって,Aequorea victoria の発光器官から緑色蛍光タンパク質GFP(green fluorescent protein)が発見され,1992年にそのcDNAが単離されて以来,生細胞イメージングは生物学研究の必須ツールになっている.GFPはcDNAの細胞導入のみで,生理的環境下での目的タンパク質の局在や局在変化を可視化し,種々のカラーバリアントが入手可能な現在では複数のタンパク質の挙動の同時観察も可能である.また,フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET: Förster resonance energy transfer)や蛍光タンパク質再構成法(BiFC: bimolecular fluorescence complementation)等の技術を用いることで,個々のタンパク質の局在や動態のみならずタンパク質の質的変化,つまりタンパク質間相互作用・構造変化等の時間的・空間的な変化の解析も可能である.これらの手法は細胞内シグナル伝達のダイナミクスを解析するために,最も適したツールと言っても過言ではない.本稿では,蛍光イメージングの基礎や応用例の紹介と各実験系が持つ得失を比較し,それぞれの実験系が何を可視化するのに適しているかを議論したい.