著者
綾野 雄幸 大塚 慎二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.41-47, 1968-12-31

食用レバー(豚)を水煮した場合,加熱が蛋白質の消化にどのように影響するか,また脱脂ならびに脱糖処理をして水煮した場合,消化性がどのように向上するかについて,ペプシンによる人工消化試験を行なった.1.消化過程中における消化率の変化は,生のもの,加熱したもの(100℃および120℃で1時間)両者とも時間の経過にともない上昇した.しかし加熱温度が高いものほど消化率は低かった.37℃で24時間消化後の消化率は生のもの89.1%,100℃で加熱したもの84.4%,120℃で加熱したもの77.6%であった.2.脱脂(凍結乾燥レバーをエチルエーテルで処理)ならびに脱糖(生レバーをglucose-oxidaseで処理した後,凍結乾燥,脱糖率59.3%)処理により消化率は向上した.脱脂したものの消化率は無処理のものより各加熱段階(60℃,100℃および120℃で1時間)とも約3〜4%高くなった.脱糖したものも約2%高くなった.消化生成物中の窒素成分の組成の点からみても,脱脂ならびに脱糖処理を行なったものは無処理のものより小分子のものに分解されていることが認められた.特に120℃に加熱したものではその傾向が顕著にあらわれた.3.レバーの消化を阻害する因子として蛋白質の加熱変性以外に,脂肪や還元糖の存在が考えられ,これらは加熱温度が高い場合に著しく影響することが分った.