著者
大塚 次男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-18, 2004

平成11年3月に国立病院療養所再編成計画の見直しがなされ, 政策医療として19分野の特定疾患に対し, 診療はもちろんのこと, 「臨床研究」, 「教育研修」, 「情報発信機能」も含めた一体となった医療提供体制の整備を行うことが明示された. その中には総合情報ネットワークシステムの整理充実も謳われている.<br>情報化により放射線診療の質, 効率が高まれば, 国立病院療養所の局面の1つでもある政策医療の推進にも大きく貢献すると考えられる. 本シンポジウムでは政策医療を推進するために放射線技師が情報技術とどのように関わっていくべきかを多方面から検討した.<br>国立京都病院上垣氏, 国立療養所村山病院田仲氏からは, 国立病院, 療養所というそれぞれの立場からIT化の現状と問題点, 各政策医療分野への取り組みについての報告がなされた. 国立病院岡山医療センター小倉氏からは, 意義ある病院情報システムを構築する手順として, 病院のコンセプトに基づいたシステム設計, 業務内容の見直しと標準化を計ることの重要性が述べられた. 国立小倉病院田上氏は, インターネットを利用した病診連携システムの構築と運用経験について報告し, 地域医療及び病院経営に貢献できる可能性を示した. 国立がんセンター中央病院塚田氏からは, 多地点テレビカンファレンスの紹介を中心に, がん診療施設情報ネットワークを政策医療推進のために活用する方法について提言があった.<br>IT化への取り組みは施設によって大きく異なっているが, 本シンポジウムの発表内容は, 今後ネットワークを構築あるいは拡充する施設において大変参考になったと考える. 施設としての明確なコンセプトを軸に取りこぼしないネットワークを構築されるよう願う.