著者
大山了己
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.103(1994-MUS-008), pp.33-38, 1994-11-19

八重山の島々には身近にいる小さな生物たちを主題に歌い上げた民謡が多い。石垣市の西北10キロメートルほど離れた場所に網張(アンバル)がある。この場所は広大な干潟(カタバル)で、そこには貝類、エビ・カニ類、鳥類が豊富に棲息している。このアンバルを舞台に展開される八重山の民謡「網張ヌ目高蟹ユンタ(アンバルヌミダガーマユンタ)」には、15種類ものカニが登場する。カニの生態、形態や行動などを巧みに捉え、擬人化したこのユンタはいわば、「鳥獣戯画」の歌謡版といえるほどの傑作である。しかし、、登場するカニの種の生物学的な特定に関して従来いくつかの混乱があった。そこで、カニの民俗学・行動学的な今回の調査結果をもとにユンタに登場するカニの種の特定を試みる。