著者
大島 芳樹 脇田 建 佐々 政孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.62-77, 2000-11-15
参考文献数
16

高機能なSmalltalk処理系であるSqueakを携帯情報端末Zaurusに移植し,Zaurusの持つ独自のハードウェアにあわせて拡張を施したので,システムの実現方法,性能,可用性の評価について報告する.我々の行った実装作業は大きく2つに分類される.まず,基本的な機能の性能を向上させるために,Zaurus上でのイベント処理方式やビットマップ変換方式の性能について定量的評価を行い,それに基づいて最適化を行った.さらに,Zaurus独自の拡張を施すことによって,ペン入力,音声機能,デジタルカメラ,TCP/IPネットワーク,シリアル・IrDAポート,電力消費制御,およびフラッシュメモリファイルシステムのようなPDA独自のハードウェアをSqueakから操作可能とした.この移植および拡張はZaurus依存の部分を記述した4000行程度のC記述および600行ほどのSqueak記述によって達成された.我々は大小各種のベンチマークによる性能評価およびいくつかのアプリケーションによる可用性評価を行った.Zaurusシリーズの最上位機種であるMI-EX1上のSqueakは,400MHz G3 Macに対して最高1/8程度の性能を示した.このベンチマークの数字および実際の使用テストから,このシステムは十分実用に耐える性能を持つことが分かった.我々の実装によって,さまざまな周辺機器を操作できる実用的なプログラミング環境を手のひらサイズの機器上で運用できることが示された.This paper reports our effort to implement Squeak Smalltalk on a family of personal digital assistant ({エit PDAエ/}) devices called Zaurus. The Squeak on Zaurus ({エit Squeak/Zaurusエ/}) offers programmable interfaces to various Zaurus specific devices. The system is evaluated in terms of its usability and performance. Two important issues in implementation of Squeak/Zaurus are as follows. Firstly, we measured performance of several implementation strategies for event-handling and bitmap conversion, which are dominant performance issues, and adopted the best ones in Squeak/Zaurus. Secondly, we have extended Squeak to support PDA specific hardware such as pen input, audio, digital camera, TCP/IP network, serial and IrDA communication, power consumption control, and file I/O on flash memory. These PDA specific devices are made directly accessible to the programmer. Those Zaurus specific functions are written in 4,000 lines of C code and 600 lines of Squeak code. The performance of Squeak/Zaurus has been evaluated by various micro- and macro-benchmarks and its usability has been tested by applications. MI-EX1, the highest model of Zaurus family, marked 1/8 of the performance of Squeak running on 400エ,MHz G3 Mac at best. This result and the usability tests indicate that it performs sufficiently well for practical use. The Squeak/Zaurus implementation demonstrates feasibility of practical programming environment on palm size devices that can operate PDA specific hardware.
著者
大島 芳樹 脇田 建 佐々 政孝
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SIG09(PRO8), pp.62-77, 2000-11-15

高機能なSmalltalk処理系であるSqueakを携帯情報端末Zaurusに移植し,Zaurusの持つ独自のハードウェアにあわせて拡張を施したので,システムの実現方法,性能,可用性の評価について報告する.我々の行った実装作業は大きく2つに分類される.まず,基本的な機能の性能を向上させるために,Zaurus上でのイベント処理方式やビットマップ変換方式の性能について定量的評価を行い,それに基づいて最適化を行った.さらに,Zaurus独自の拡張を施すことによって,ペン入力,音声機能,デジタルカメラ,TCP/IPネットワーク,シリアル・IrDAポート,電力消費制御,およびフラッシュメモリファイルシステムのようなPDA独自のハードウェアをSqueakから操作可能とした.この移植および拡張はZaurus依存の部分を記述した4000行程度のC記述および600行ほどのSqueak記述によって達成された.我々は大小各種のベンチマークによる性能評価およびいくつかのアプリケーションによる可用性評価を行った.Zaurusシリーズの最上位機種であるMI-EX1上のSqueakは,400MHz G3 Macに対して最高1/8程度の性能を示した.このベンチマークの数字および実際の使用テストから,このシステムは十分実用に耐える性能を持つことが分かった.我々の実装によって,さまざまな周辺機器を操作できる実用的なプログラミング環境を手のひらサイズの機器上で運用できることが示された.