著者
大木 基裕 中野 正樹 酒井 崇之 関 雅樹
出版者
The Japanese Geotechnical Society
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.59-70, 2014

鉄道構造物の中でも既設盛土の耐震補強化は喫緊の課題であり,大規模崩壊の恐れのある盛土の耐震補強が行われている。本稿では,現行の鉄道技術基準に基づく盛土の耐震性能の考え方とこれまでの耐震補強の概要を示す。次に,3つの粘土地盤上の盛土を対象に,動的遠心模型実験,有限要素解析を実施し,地震時における盛土の破壊形態を確認し,ニューマーク法による変形予測の精度を検証する。実験や解析の結果,同一の支持地盤の強度であれば盛土が高くなるほど,また,同一の盛土高さであれば支持地盤の強度が小さくなるほど,破壊形態は,盛土主体から地盤も含む破壊形態へと移行し,変形レベルも大きくなる。また,盛土を主体とする円弧すべり状の破壊形態が生じたケースに対しニューマーク法を用いた結果,求められた沈下量は模型実験結果とほぼ等しくなった。簡便な耐震性能評価手法であるニューマーク法は,盛土の破壊形態を適切に考慮することにより沈下量の精度は高まり,設計において有用となることが示唆された。