著者
大木 文子 池田 由紀江
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.26-35, 1985-06-30
被引用文献数
1

2語発話初期の精神発達遅滞児の統辞的2語発話を統辞意味論的に分析することによりその初期文法の解明を試みた。2語発話初期の精神発達遅滞児8名,及び同様の表出言語年齢の普通児3名について、4ヶ月間その発話を分析した。収集された発話のうち2語発話動詞述語文のみについて、統辞意味論的構造分析を施した。その結果、普通児は、"だれだれがどうする"の意味関係を示す2語発話を早期から獲得し、その使用も集中していたのに対し、精神発達遅滞児は、このような傾向があらわれず、"-がある"や"-をどうする"などの発話が比較的一定して使用されていることが示された。これより、普通児は、人の行為を早期から集中して表現するのに対し、精神発達遅滞児は、人以外のものについての表現が多く、行為や、人そのものに対する抽象化に困難を示すことが推察された。これより、普通児の言語発達との質的な差異が示唆された。