著者
伊勢田 徳宏 横山 雅好 金山 博臣 大本 安一 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.514-519, 2000-05-20
参考文献数
19

(目的)腎細胞癌におけるinterferon receptorの発現の有無,発現量,発現部位ならびにその意義は検討されておらず,同様に細胞核内からの伝達により産生されている酵素や蛋白等なども検討されていない。今回,抗体を用いたELISA法による細胞膜外部分の可溶性interferon-α/β receptor(s-IFN-receptor)の測定系が確立されたので腎細胞癌患者血清を用い臨床的意義を検討した。(対象・方法)1990年から1995年までに愛媛大学医学部泌尿器科を受診した腎細胞癌患者27例の血清中s-IFN-receptor値の測定を行った。採決は治療前空腹時とし,血清分離した後測定するまで-80度で凍結保存した。また徳島大学医学部で測定した健常者22例の血清中s-IFN-receptor値と比較した。(結果)腎細胞癌患者では健常者に比し,血清s-IFN-receptor値は有意に高値であった。(p<0.003)。High risk群のs-IFN-receptor値は高かった。生存率について,今回の腎細胞癌患者のs-IFN-receptor平均値の2.7±1.7ng/ml以上と未満で検討したところ,高値群では4年の累積生存率は53.3%,低値群では78.7%であった(Logrank検定,p=0.4289)。High risk群とlow risk群の4年生存率では有意さはあったが(Logrank検定,p=0.0342),high risk群およびlow lisk群においてs-INF-receptor値と生存率に相関がなかった。s-IFN receptor値は,一般的に腎細胞癌の予後因子と言われているCRP,赤沈とは相関していなかった(Spearman Rho値,0.33,0.31)。(結論)今回,s-IFN-receptor値と予後との関連を明らかにすることはできなかったが,腎細胞癌治療前において,一般的に予後因子とされるCRP,赤沈とは相関しておらず,今後,これらとは独立した因子である可能性を含め,さらに症例数を増やして検討する必要があると考えられる。